「手首を反らしたり物を持ち上げたりすると、肘の外側がズキッと痛む」「タオルをしぼる・ドアノブを回すと肘の内側が痛む」——肘の痛みは、家事や仕事、スポーツなど毎日の動作にかかわるぶん、地味につらいですよね。「このまま使い続けて大丈夫かな」と不安になる方も多いと思います。
理学療法士として患者さんと接していると、肘の痛みを訴える方は外側・内側どちらも多い印象です。この記事では、「自分の肘の痛みは何だろう」「どうすればいいんだろう」という不安に少しでも寄り添えるよう、肘の外側・内側それぞれで考えられる原因と、ご自宅でできること、受診の目安までをお伝えします。あくまで一般的な目安としてお読みくださいね。
まず、どのあたりが痛みますか?
肘の痛みは、大きく「外側が痛むタイプ」と「内側が痛むタイプ」に分けて考えると、原因の見当をつけやすくなります。手のひらを上に向けたとき、親指側(外側)が痛むのか、小指側(内側)が痛むのかを、まず確かめてみてください。もちろん傾向であって、原因は人それぞれです。痛む場所がはっきりしないときや両方痛むときは、無理に分けず、後半の「ご自宅でできること」から始めてみましょう。
肘の外側が痛むとき
テニス肘(上腕外側上顆炎=じょうわんがいそくじょうかえん)
肘の外側には、手首を反らしたり指を開いたりする筋肉がついています。テニスをしていない方でも、家事・PC作業・重い物を持つ動作の繰り返しで起こることが多く、「テニス肘」と呼ばれます。手首を反らしたとき、指をグーからパーに開いたときに、肘の外側が痛む、という方が多い印象です。
ご自分で確かめる目安として、次のような方法があります。痛みが強いときは無理をせず、できる範囲で試してくださいね。
- 手首を反らして止め、反対の手で曲げる方向に軽く押すと、肘の外側が痛む
- 痛いほうの手で椅子の背もたれを持つと痛む(持ち上げるのは大変なので無理は禁物です)
- 手のひらをパーで止めたまま、中指を上から軽く押さえると痛む
痛みが落ち着いてきたら、次のようなストレッチを痛みの出ない範囲で試してみてください。
- 肘を伸ばして腕を前に出し、手首を曲げて手の甲を下に向け、反対の手で手の甲を軽く押さえて前腕の上側を伸ばす
- 指を下にして手の甲どうしを合わせ(「いただきます」の逆の形)、その形のまま肘を少しずつ下げて、手首〜前腕を気持ちよく伸ばす
橈骨(とうこつ)神経のトラブル(橈骨トンネル症候群)
肘の外側を通る橈骨神経が、圧迫や刺激を受けて痛むことがあります。手の甲や指先にしびれ・チクチクする感じがあったり、指を開きにくいと感じたりする場合は、こちらの可能性も考えられます。神経の問題が疑われるときは、痛んだりしびれたりする動きは避けて、早めに整形外科で相談するのが安心です。
関節の中の問題・変形性肘関節症
軟骨のすり減りや、関節のなかで骨どうしがぶつかること、関節ねずみ(関節内ではがれた小片)、滑膜(かつまく)の炎症などが原因になることもあります。変形性肘関節症では、運動時の痛みや、動かせる範囲の制限、ロッキング(伸ばしたまま動かしにくくなること)などがみられるとされています。
これらはストレッチだけで改善するのは難しいことが多く、肘に負担をかけない(痛い動きを避け、軽く曲げた位置を保つ)ことが大切です。気になるときは、自己判断せず一度検査を受けてみてくださいね。
肘の内側が痛むとき
ゴルフ肘(内側上顆炎=ないそくじょうかえん)
肘の内側には、手首を曲げる・物を握る筋肉がついています。指を使って強く握る、前腕をひねる、手首を手のひら側にしっかり曲げる動作(家事・PC・料理で包丁やフライパンを使うときなど)で、肘の内側が痛む、という方が多い印象です。ゴルフのスイングで負担がかかることから「ゴルフ肘」とも呼ばれます。押すと痛んだり、赤み・熱っぽさ・腫れといった炎症のサインがみられたりすることもあります。
痛みが落ち着いてきたら、次のストレッチを痛みの出ない範囲で試してみてください。
- 肘を伸ばして腕を前に出し、手のひらを正面に向け、反対の手で指先をつかんで手首を反らし、肘の内側〜前腕を伸ばす
- 「いただきます」の形で手を合わせ、手の位置はそのままで肘だけ少しずつ下げ、気持ちよく伸ばす
尺骨(しゃっこつ)神経の刺激(肘部管=ちゅうぶかん症候群)
肘の内側を通る尺骨神経が刺激されると、小指・薬指がしびれたり、力が入りにくくなったりすることがあります。次のような目安もあります。
- フローマン徴候:紙を両手の親指と人差し指ではさんで引っ張り合うと、親指の関節が立ってしまう
- 小指・薬指が、かぎ爪のような形になりやすい
当てはまる場合は肘部管症候群の可能性があります。肘を深く(90度以上)曲げると関節への圧力が高まるとされるため、深く曲げ続けないようにし、早めに受診を検討してくださいね。
内側側副靱帯(ないそくそくふくじんたい)の傷み
野球やテニスで肘をひねる動作を繰り返したり、転びそうになって体の横で手を強くついたりしたあとに、肘の内側が痛む場合は、靱帯の傷みが考えられます。靱帯の傷みがあるときは、ストレッチがかえって炎症を強めることがあるため、まずは安静が基本です。痛みが落ち着いてから、周りの筋肉をやわらかく保ち、軽い負荷で支える筋力をつけていきましょう。
ご自宅でできること
外側・内側のどちらにも共通して、まず大切なのは無理に動かさないことです。痛みが強い時期は、次のことを意識してみてください。
- 痛みが強くなる動作は、いったんやめる
- 反対側の腕で日常生活をまかなう
- 数日〜1週間は負担をかけず、様子をみる
冷やすか温めるかは、「いつから・どんな痛みか」で選ぶのがポイントです。同じ肘の痛みでも、時期によって正解が逆になります。
- 痛くなってきたばかり・ズキッと鋭い痛み・熱っぽいときは「冷やす」:15分ほど冷やして、炎症を落ち着かせるのが先です。
- 慢性的でズーンと重い痛み・こわばりには「温める」:長く続く鈍い痛みには、蒸しタオルなどで温めると血行がよくなり、楽に感じることがあります。
痛みが落ち着いてきたら、各部位のストレッチに加えて、手首を前後に動かす運動や肘の曲げ伸ばしを、軽い負荷(500mlのペットボトル程度)で少しずつ行うと、再発予防につながります。肘サポーターで関節の負担を軽くするのも、ひとつの方法です。
受診を考えたい目安
セルフケアで様子をみても、次のようなときは、自己判断せず整形外科を受診してください。早めに相談しておくと、その後の生活のしやすさにつながります。
- 2週間以上、痛みが続いている・だんだん強くなっているとき
- 手や指のしびれ、力の入りにくさがあるとき(神経の問題の可能性)
- 肘が伸ばせない・曲げられない、動かせる範囲が急に狭くなったとき
- 転んで手をついたあと・ぶつけたあとから強く痛むとき(骨折などの可能性)
- 夜も眠れないほど痛むとき
「これくらいで病院に行っていいのかな」とためらう方も多いのですが、不安なまま我慢するより、一度みてもらったほうが安心できることがほとんどです。
介護で腕を使う方へ
ご家族の介護をされている方は、ベッドと車椅子の移乗や抱え上げ、おむつ交換、体を拭く動作などで、知らず知らずのうちに肘や前腕を使いすぎていることがあります。手首をひねる・強く握る動作の繰り返しになりやすく、テニス肘・ゴルフ肘と同じような痛みにつながることがあるのです。
負担を減らすには、腕の力だけで持ち上げず脚や体重移動など体全体を使う、手すりやスライディングシートなどの福祉用具を活用する、痛みが出たら早めに休めることが大切です。「自分のことは後回し」になりがちですが、介護を続けていくためにも、どうかご自身の体も大事にしてくださいね。介護や転倒予防のくわしい記事は、こちらのまとめページからも探せます。

まとめ
肘の痛みは、外側では「テニス肘」、内側では「ゴルフ肘」が代表的で、ほかに神経や靱帯、関節そのものが関係していることもあります。ご自宅では、痛くなってきたばかりの鋭い痛みは「冷やす」、慢性的なズーンとした痛みは「温める」を目安に、痛い動きを避けて様子をみましょう。しびれや強い痛みが続くときは、ためらわず整形外科に相談してくださいね。肩や膝の痛みが気になる方は、こちらもあわせてご覧ください。





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