老人ホームの種類と費用をわかりやすく|「3つのグループ」で現役PTが解説

老人ホームの種類と費用をわかりやすく|3つのグループで現役PTが解説(アイキャッチ画像) 介護
ケレン(現役理学療法士)
この記事を書いた人:ケレン(現役理学療法士)
病院で毎日、高齢の患者さんとご家族の「退院後の生活」に向き合っています。
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📅 2026年7月公開

「親の自宅での暮らしが、少しずつ難しくなってきた」「離れて暮らす親のひとり暮らしが、そろそろ心配」——そんな時期に老人ホームを調べ始めると、一覧表に9種類も11種類も並んでいて、余計に分からなくなった。そんな声をよく聞きます。

最初にお伝えしたいのは、ご家族が全種類を暗記する必要はないということです。

私は施設を紹介する会社の人間ではありません。病院のリハビリ室で、「家に帰るか、施設にするか」の場面に立ち会ってきた理学療法士です。その立場から、種類の話を「3つのグループ」に整理して、体の状態から見た施設との付き合い方まで、正直にお伝えします。

施設探しは、家族がひとりで背負わなくていい

種類の話に入る前に、これだけは知っておいてください。施設の候補を絞る作業は、専門職に任せていいのです。

  • 在宅で介護中(要介護認定あり):担当のケアマネジャーさんが、状態に合う施設の候補を一緒に考えてくれます
  • まだ認定を受けていない:お住まいの地域包括支援センターが相談窓口です(無料)
  • 入院中:病院の退院支援の専門職が、体の状態や認知機能から候補を絞ってくれます。実際の現場では、専門職が候補を出したうえで「ご家族のご希望は?」と聞かれる順番で進むことが多いです

つまりご家族の役割は、たくさんの種類から正解を選び抜くことではなく、候補を出してもらったときに「本人と家族の希望」を伝えられること。そのために、大きな地図だけ頭に入れておきましょう。それが次の3つのグループです。

老人ホームの種類は「3つのグループ」で考える

なお、種類の説明は「もう他のサイトで読んできた」という方も多いと思います。その場合、この章は飛ばしてしまって大丈夫です。この記事の後半には、理学療法士としての本音費用のアドバイスを載せているので、そちらから読んでいただいても構いません。

グループ 代表的な施設 こんな希望に
① 家に帰るための施設 老人保健施設(老健) リハビリをして家に帰りたい
② 長く暮らす住まい 特養・有料老人ホーム・サ高住・グループホーム 安心できる場所で暮らしたい
③ 家と行ったり来たりする道 ショートステイ・小規模多機能 できるだけ家での暮らしを続けたい

① 家に帰るための施設|老人保健施設(老健)

老健は、リハビリをして家に帰ることを目的にした施設です(原則、要介護1以上)。「施設に入る=もう家に帰れない」と思われがちですが、老健は最初から「帰る」ためにあります。

私の病院(整形外科)では、退院先として一番よく見るのがこの老健です。ご本人もご家族も「リハビリを頑張って、家に帰りたい」という希望の方が多い印象です。骨折などで入院して、「家に帰るにはもう少しリハビリが必要」というときの、心強い中継地点です。

🌱 PTのひとこと:「家に帰る」という目標がはっきりしている施設は、ご本人のリハビリへの向き合い方も変わってきます。リハビリの中身は施設によって差があるので、「誰が・何を・週何回」まで聞いてみてください。

② 長く暮らす住まい|特養・有料老人ホーム・サ高住・グループホーム

特別養護老人ホーム(特養)は、原則要介護3以上の、介護が常に必要な方の住まいです。公的施設なので費用を抑えやすいのが特徴ですが、申し込んでから待つことがあります(待機期間は地域や介護度によって大きく違います)。

有料老人ホームは、「ひとり暮らしを続けるのは厳しい。でも、家族の世話にはなりたくない」という中間の希望に応える住まいです。現場では、ご本人は最初は乗り気でなくても、ご家族と話し合って納得して入居される方が多い印象です。

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、見守りスタッフのいる賃貸住宅です。「ひとりで暮らしたい。でも、何かあったときに呼べる人がいてほしい」という方に合います。現場で感じるのは、スタッフがいる安心感と、「家族に迷惑をかけていない」というご本人の気持ちを、両立できることです。この「本人の気持ち」は、住まい選びで意外と大きな要素です。

グループホームは、認知症の方が少人数で共同生活をする住まいです(地域密着型のため、原則お住まいの市町村の施設に限られます)。私は病院からの退院先としてはあまり見かけませんが、これは在宅からの入居が中心だからだと思います。

③ 家と「行ったり来たり」する道|ショートステイ・小規模多機能

「施設か、自宅か」の二択で悩む前に、知っておいてほしい道があります。

ショートステイ(短期入所)は、施設に数日単位で泊まれるサービスです。介護しているご家族の休息(レスパイト)のために使えるのはもちろん、ご本人が「施設の生活」を短期間だけ体験してみるという使い方もできます。いきなり入居を決める前のお試しとして、現場でもよく使われています。

小規模多機能型居宅介護は、施設への「通い」を中心に、「泊まり」と自宅への「訪問」を組み合わせて使える在宅サービスです。「平日は夕方まで通って、週末は自宅で過ごす」「今日は午前だけ」といった使い方ができて、施設と自宅を行ったり来たりしながら、少しずつ回復を目指すイメージです。同じ事業所の顔なじみのスタッフに融通を利かせてもらいやすいのも特徴です。

⚠️ 正直な注意点

小規模多機能は「地域密着型サービス」のため、原則、事業所がある市町村に住んでいる方しか利用できません。事業所数も全国約5,500か所と、デイサービス(約2万4千か所)に比べるとかなり少なめで、定員も小さめです(令和6年・厚生労働省調査)。気になったら、まずケアマネジャーさんか地域包括支援センターに「うちの市町村にありますか?」と聞いてみてください。

老人ホームの種類の図解。目的別でグループは3つだけ:リハビリをして自宅に戻る・安心できる場所で長く暮らす・今の住まいと施設を往復する

理学療法士の本音|「施設に入ると弱る」とは限りません

「施設に入れたら、一気に弱ってしまうんじゃないか」——そう心配されるご家族は多いです。リハビリの現場にいる立場から、正直にお伝えします。そうとは限りません。むしろ逆のこともあります。

自宅でひとり、一日中座ってテレビを見て、人と話さない生活が続くと、体は着実に衰えていきます。一方、施設には「朝起きて、食堂まで歩いて、人と話しながら食事をする」という毎日のリズムと、動く理由があります。実際、施設でリハビリを続けて体力が戻り、「おうちに帰れました」と報告してくれた方を、私は何人も見てきました。

だから「施設=あきらめ」ではなく、暮らしと体を立て直す選択肢のひとつとして見ていいと私は思っています。ただし、運動の機会がどれくらいあるかは施設によって差が大きいので、そこは見学で確かめてほしいポイントです(見学のチェックリストに見方をまとめています)。

施設入居で弱るとは限らない図解。家でテレビの前に座り続ける生活と、朝起きて食堂まで歩き、人と話しながら食事する施設の生活の対比

費用は「平均額」より「仕組み」を知るほうが役に立つ

費用について、「平均◯万円」という数字はあまり当てにしすぎないほうがいいと私は思っています。地域と施設による差がとても大きいからです。それより、お金の仕組みを知っておくほうが、パンフレットを読むときに役立ちます。

  • 入居一時金:民間の施設(有料など)で最初にかかることがあるお金。0円の施設もあります
  • 月額費用:家賃・管理費・食費+介護保険の自己負担分(1〜3割)の合計
  • 公的施設(特養・老健)は入居一時金がなく、月額も抑えめ。民間は設備やサービスの分、幅が広い

そのうえで、ざっくりの目安だけ添えておきます。特養や老健などの介護保険施設は、国の解説ページのモデル計算で月およそ10万〜14万円(要介護5・自己負担1割の例。相部屋か個室かで変わります)。民間の施設は月10万円台から30万円を超えるところまで本当に幅広く、入居一時金の有無でも大きく変わります。「同じ種類でも、地域と施設でこれだけ違う」というくらいの受け取り方でちょうどいいと思います。

現場でご家族から聞くのは、「お金は、どうにか頑張ります」という言葉です。それだけ大きな負担だということだと思います。でも、頑張る前に知ってほしい制度があります。

負担限度額認定(特定入所者介護サービス費):特養や老健などの食費・居住費は、所得や資産が一定以下の方なら、市区町村に申請することで軽減されます。該当しそうなら、申請しない手はありません。くわしくは厚労省の解説ページ(サービスにかかる利用料)をどうぞ。

費用が心配なときは、地域包括支援センターに予算を正直に伝えて相談するのが近道です。「お金がないから施設は無理」と諦める前に、使える制度と現実的な選択肢を一緒に探してもらえます。くわしくは「お金がないから施設は無理?と決める前に」にまとめました。

施設の費用の図解。月々の支払いは家賃・管理費・食費・介護保険の自己負担の足し算。民間は入居一時金が最初にかかることがある

迷ったときの分かれ道は、「歩けるか」より「認知機能」

現場の実感として、施設選びの一番大きな分かれ道は認知機能です。認知症や認知機能の低下があると、見守りや付き添いの必要性が一気に増えるからです。

逆に、車いすの方でも、環境さえ整っていればひとりで暮らしている方は実際にいます。バリアフリーの住まいで「困ったときだけ呼びますね」というスタイルです。

だから、「歩けなくなったから施設」と急ぐ必要はありませんし、「まだ歩けているから大丈夫」と安心しすぎるのも少し危うい。「あれ?」と感じる変化があったら、施設の検討とは別に、早めに相談を始めるのがおすすめです。

よくある質問(Q&A)

Q. 施設に入ったら、もう家には帰れませんか?

A. 外出・外泊のルールは施設や種類によって違うので、「外泊はできますか?」は見学のときの質問リストに入れておいてください。忘れられない方がいます。私の病院では入院中の外泊が基本的に認められていなかったのですが、「一度でいいから家に帰りたい」と、午前中に退院して、ご自宅でお昼ごはんと小休憩をしてから、午後に施設へ向かった方がいました。「少しでも家に」という気持ちは、それだけ自然なものです。家との行き来を大事にしたい方は、③のショートステイや小規模多機能も選択肢になります。

Q. 認知症があると、入れる施設は限られますか?

A. グループホームは認知症の方専門の住まいです。有料やサ高住も受け入れていることは多いですが、体制は施設によって幅があります。種類の名前だけで判断せず、「認知症の受け入れ体制」を個別に確認するのが確実です。

Q. お金に余裕がなくても、入れる施設はありますか?

A. 特養は費用を抑えやすく、食費・居住費の軽減制度(負担限度額認定)もあります。地域包括支援センターに予算を正直に伝えて相談してみてください。予算に合わせた探し方を一緒に考えてもらえます。

Q. いつから探し始めればいいですか?

A. 担当のケアマネジャーさんに「そろそろ考えた方がいいですか?」と聞いてみるのが確実です。特養のように待つことがある施設もあるので、「まだ先かな」と思う時期に情報だけ集めておくと、いざというときに慌てずにすみます。考え始めるタイミングについては親を施設に入れる罪悪感|考え始めるタイミング2つの目安にまとめています。

Q. 施設に、こちらの希望を伝えてもいいのでしょうか?

A. 聞いてみると、希望が通ることは少なくない印象です。「こんなことはお願いできますか?」と、勇気を出して一言聞いてみてください。そのうえで、リハビリのような大事な点は「誰が・何を・週何回」まで具体的に聞くと、入所後の生活がイメージしやすくなります。見学での見方と質問リストは老人ホーム見学のチェックリストにまとめています(無料の見学チェックシート付き)。

まとめ|種類の暗記より、「希望を伝える準備」を

  • 種類は3つのグループで考える——①家に帰るため(老健)②長く暮らす(特養・有料・サ高住・グループホーム)③行ったり来たり(ショートステイ・小規模多機能)
  • 候補を絞るのは専門職に任せてOK。家族の役割は「本人と家族の希望を伝えること」
  • 「施設に入ると弱る」とは限らない。動く理由とリズムのある暮らしは、体の味方にもなる
  • 費用は平均額より仕組み。負担限度額認定など、頑張る前に使える制度を確認
  • 分かれ道は「歩けるか」より「認知機能」

次の一歩はシンプルです。担当のケアマネジャーさんがいる方は「そろそろ施設も考えたほうがいいですか?」と聞いてみる。まだ要介護認定を受けていない方は、地域包括支援センターへ。そして気になる種類が2〜3つに絞れたら、資料やパンフレットを取り寄せて比べて、見学に進んでみてください。見学の見方は見学のチェックリストがお守り代わりになるはずです。

📩 最後まで読んでいただきありがとうございます

「結局、うちの親はどのグループだろう?」——体の状態や認知機能、ご本人の希望によって、合う施設は変わります。理学療法士として、状況に合わせてお答えします。

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