介護休暇と介護休業の違い|親の入院・退院で会社を休むのはどっち?現役PTが場面別に解説

介護休暇と介護休業、どっち? リハビリ室の入口で、理学療法士のリスがカレンダーを見せながら会社員の猫に説明し、親猫が椅子で笑顔で座っているイラスト 介護

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ケレン(現役理学療法士)
この記事を書いた人:ケレン(現役理学療法士)
病院で毎日、高齢の患者さんとご家族の「退院後の生活」に向き合っています。
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📅 2026年9月公開

「来週の水曜日に、ご自宅の様子を見に行きます。ご家族も一緒に来られますか?」——病棟で退院の準備が始まると、家族にこうお願いする場面があります。そのとき、多くの方が最初に口にするのが「会社を休めるかどうか」です。介護休暇と介護休業、名前は似ていますが、使う場面がまったく違います。

この記事では、現役の理学療法士が、親の入院から退院までに「家族が平日の昼に来なければならない日」を具体的に挙げながら、どちらの制度を使えばよいかを場面別に整理します。あわせて、「今の私でも申請できるの?」「会社に言いにくい」という、病棟で実際によく聞く不安にも答えます。

この記事の答え(先に3つ)

  • 半日〜数日の「点」の休みは介護休暇。年5日(対象家族が2人以上なら10日)、時間単位で使えます。家屋調査や退院日はこのタイプ
  • まとまった「期間」の休みは介護休業。対象家族1人につき通算93日、3回まで分けられます。退院後の生活を立ち上げる期間はこのタイプ
  • パートの方も、入社して間もない方も、多くの場合どちらかは使えます。条件を満たす申し出を会社が断ることは、法律で認められていません。まず就業規則を見て、人事に「制度を教えてほしい」と聞いてよい制度です

制度の内容は2026年9月時点のもので、会社ごとの就業規則や労使協定で細かな条件が変わります。最終的な確認は、勤務先と厚生労働省の介護休業制度特設サイトでお願いします。

病棟で「家族が平日の昼に来る日」はどんな日か|場面別にどっちを使う?

まず、実際にどんな日に休みが必要になるのかを知っておくと、申請の見通しが立ちます。入院から退院までで、ご家族に平日の昼間に来ていただくことが多い日と、そのあとに続く場面を、必要な時間と一緒に並べました。

場面 内容 必要な時間 向いている制度
親が急に倒れて駆けつける 救急搬送、入院の付き添い 1〜3日 まずは有給休暇が現実的。介護が必要な状態だと分かってきたら介護休暇
入院直後の説明・手続き 入院の手続き、病状やリハビリの説明 半日 介護休暇(時間単位)
家屋調査(家の様子を見に行く日) 理学療法士や作業療法士がご本人と一緒に自宅へ。手すり・段差・浴槽を確認。ご家族の立ち会いをお願いすることが多い(見る場所は退院前に家を整える 半日 介護休暇(時間単位)
退院前カンファレンス 医師・看護師・リハビリ・相談員・ケアマネジャーと退院後の生活を話し合う 1時間前後 介護休暇(時間単位)
退院指導(介助の練習) 起き上がり・歩行・トイレ・お風呂の介助を実際にやってみる 1〜2時間 介護休暇(時間単位)
退院日の送迎 荷物の引き取り、会計、自宅までの移動 半日〜1日 介護休暇
退院後、在宅の生活を立ち上げる サービスを決める、家を整える、最初の数日を一緒に過ごす 1〜2週間 介護休業(1回目)
施設を探す・見学する 資料請求、見学、契約 数日〜数週間 介護休暇か介護休業(2回目)
介護が長引き、働き方を変えたい 時短、残業の免除など 継続的 両立支援制度(この記事の後半で)

並べてみると、入院中に必要な休みはほとんどが半日単位です。つまり、入院中の多くは「介護休暇」の出番になります。「介護休業」が必要になるのは、退院したあとに、生活を立ち上げるまとまった時間がほしいときです。入院中にご家族ができることは、親の入院リハビリ、家族は何をすれば?にまとめています。

私の病棟では、ご家族の仕事の都合に合わせて家屋調査やカンファレンスの日程を調整することは珍しくありません。「この日なら休めます」と遠慮なく伝えてください。日程を先に決められると、休みの申請もしやすくなります。

仕事や距離の事情で、どうしても来られない方もいます。その場合は、家の写真を送ってもらう、電話で説明を聞くなど、来なくてもできる形を病棟と相談してください。「来られない」を伝えてもらえれば、こちらも代わりの方法を考えられます。

介護休暇と介護休業の違い|早見表

介護休暇 介護休業
向いている場面 通院の付き添い、家屋調査、カンファレンス、退院日など「点」の用事 退院後の立ち上げ、施設探しなど「期間」が必要なとき
取れる日数 1年に5日(対象家族が2人以上なら10日) 対象家族1人につき通算93日、3回まで分割
単位 1日または時間単位 日単位(連続した期間)
申し出 口頭でも可。当日の申し出を認める会社も多い 開始したい日の2週間前までに書面など
給料 有給か無給かは会社の規定による。給付金はない 会社からは無給が一般的。雇用保険の介護休業給付金がある(条件あり)
対象外になりうる人 日々雇用の方。労使協定があれば週2日以下の勤務の方 日々雇用の方。労使協定があれば入社1年未満、93日以内に退職が決まっている、週2日以下の勤務の方

介護休暇とは|半日・数時間の「点」の休み

介護休暇は、要介護状態の家族の世話をするために、1年に5日まで(対象家族が2人以上なら10日まで)取れる休みです。時間単位で取れるので、「午後だけ」「2時間だけ」という使い方ができます(業務の内容によっては、労使協定で日単位のみになっている会社もあります)。

  • 使える場面:通院の付き添い、介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせなど。家屋調査やカンファレンスもここに入ります
  • 申し出:書面に限らず、口頭でも申し出ができます。会社の様式があればそれを使います
  • 給料:有給にするか無給にするかは会社の規定によります。有給休暇とは別枠で、介護休暇には給付金はありません
  • 対象:日々雇用の方を除く労働者。パートやアルバイトの方も対象です。労使協定がある会社では、週の所定労働日数が2日以下の方は対象外になることがあります
  • 2025年4月から:「入社6か月未満の人は対象外」という扱いができなくなりました

介護休業とは|まとまった「期間」の休み

介護休業は、要介護状態の家族を介護するために、対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分けて取れる休みです。1回で93日使い切る必要はなく、「退院直後に2週間、施設に移る前に1か月」のように分けられます。93日は介護が終わる期間ではなく、介護の体制をつくる期間として使うのが現実的です。分け方の設計は介護休業93日の使い方|3回に分ける設計図にくわしく書きました。

  • 対象家族:配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母
  • 要介護状態とは:けがや病気、障害で、2週間以上にわたって常時介護が必要な状態。介護保険の要介護認定を受けていることは条件ではありません
  • 申し出:休業を始めたい日の2週間前までに、書面などで会社に申し出ます
  • 対象:日々雇用の方を除く労働者。労使協定がある会社では、入社1年未満の方、93日以内に退職が決まっている方、週の所定労働日数が2日以下の方は対象外になることがあります。契約期間のある方は、休業開始から93日たった日からさらに6か月の間に「契約が終わって更新されない」とはっきり決まっていなければ、対象になります
  • 給料:会社からの給料は無給が一般的ですが、雇用保険から介護休業給付金が出る制度があります(休業開始時の賃金日額の67%相当。条件があります)。手続きは会社を通じてハローワークに申請するのが一般的で、条件はハローワークで確認できます。入院費用など、お金の相談先は親の入院費用はいくら?誰に聞くかにまとめています

「今の私でも申請できる?」よくある不安に答えます

病棟でご家族から聞く、制度についての不安をまとめました。多くは「使える」が答えです。

入社して3か月です。まだ取れませんよね?

介護休暇は取れます。2025年4月から、入社6か月未満の人を対象外にする扱いができなくなりました。介護休業のほうは、労使協定で入社1年未満の方を対象外にしている会社があるので、就業規則を確認してください。

パート・契約社員でも使えますか?

使えます。日々雇用の方を除いて、雇用形態は問いません。週の所定労働日数が2日以下の方は、労使協定で対象外になっていることがあります。契約期間のある方の介護休業は、休業開始から93日たった日からさらに6か月の間に、契約が終わって更新されないことがはっきりしていなければ対象です。更新の可能性があれば申し出できます。

親はまだ要介護認定を受けていません

認定は条件ではありません。「2週間以上、常時介護が必要な状態」であれば対象です。退院後に起き上がりや歩行、トイレなどに介助が必要になる見込みの方は、この状態に当てはまることが多い印象です。会社によっては厚生労働省の判断基準にそって確認されます。診断書などの書類は法律上必須ではありませんが、求められることはあります。

親とは別居です。義理の親でも?

同居や扶養は条件ではありません。遠方に住む親も対象です。配偶者の父母も対象家族に入っています。

有給休暇がもう残っていません

介護休暇は有給休暇とは別枠です。有給を使い切っていても申請できます。ただし、給料が出るかどうかは会社の規定によります(無給の会社もあります)。

きょうだいで分けて取れますか?

制度は働いている人ごとです。お兄さんはお兄さんの会社で、妹さんは妹さんの会社で、それぞれ申請できます。家屋調査は兄が、退院日は妹が、という分担がしやすくなります。

会社に言いにくいときに、知っておいてほしいこと

制度があっても、「言い出しにくい」で止まってしまう方はとても多いです。病棟で「会社に言えていない」とこっそり打ち明けられることもあります。そういう方に、私が伝えていることを書きます。

法律で決まっていること

  • 法律の条件を満たす人からの介護休暇・介護休業の申し出を、会社は断ることができません。取ったことを理由に不利益な扱いをすることも禁止されています
  • 2025年4月から、家族の介護が必要になったと申し出た人には、会社が制度の内容を個別に説明し、使う意向を確認することが義務になりました。研修や相談窓口など、制度を使いやすくする環境づくりのいずれかを行うことも会社の義務です
  • 40歳になった時点で、会社から介護の制度について情報提供することも義務になっています

つまり、「聞いてよい」どころか、会社の側に説明する義務があるのが今の仕組みです。切り出し方に迷うなら、次の順番がおすすめです。

  1. 先に人事や総務にだけ相談する。同僚に知られたくない場合は、「まず制度を教えてほしい」と窓口に聞くところから始められます
  2. 予定が決まっている日から伝える。「来週水曜の午後に病院の家屋調査があるので、介護休暇を時間単位で取りたい」のように、日付と時間がはっきりした休みは上司も調整しやすいです
  3. 病院の予定表を見せる。家屋調査やカンファレンスの日程は病院から紙で渡されることが多く、見せるだけで話が早く進みます
  4. 「まだ何日必要かは分からない」と正直に言う。退院後の見通しは、退院前カンファレンスで立ちます。その時点で改めて相談する、と伝えておけば十分です

病棟の立場から一つ付け加えると、私の病棟では、家族が来られない日に無理に予定を組むことはしていません。「会社に言えていないので平日は難しい」と言っていただければ、こちらで日程を工夫できることもあります。隠すより、伝えてもらったほうが、ご本人の退院にもよい形につながることが多いです。

介護が長引きそうなとき|休む以外の制度

介護が長引きそうなときは、休むだけでなく働き方を変える制度があります。所定労働時間の短縮、所定外労働(残業)の免除、時間外労働や深夜業の制限などで、介護休業を使い切ったあとの選択肢になります。在宅勤務(テレワーク)は2025年4月から会社の努力義務になりましたが、権利として保証されているわけではないので、会社の制度を確認してください。

制度の全体像と、働きながら支えるための選択肢は親の介護と仕事は両立できる?仕事を続けながら支える制度と選択肢にまとめています。仕事を辞める判断は最後にしてほしい理由と、病棟で見た現実は親の介護で仕事を辞めるべき?に書きました。

よくある質問

Q. 介護休暇と有給休暇、どちらから使えばいいですか?

決まりはありません。介護休暇が無給の会社なら、まず有給休暇を使い、介護休暇は「時間単位で細かく休みたいとき」や「有給がなくなったとき」に取っておく、という考え方もあります。有給の残り日数と会社の規定を見て決めてください。

Q. 半日だけ休めば足りますか?

家屋調査やカンファレンスは半日で足りることが多いです。ただし、退院日は会計や荷物、自宅での最初の介助まで含めると1日見ておくと安心です。退院指導は1〜2時間ですが、練習した介助を家でやってみる時間もあるとよいので、当日は余裕を持たせてください。

Q. 退院が急に決まって、介護休業を2週間前に申し出できません

申し出が2週間前より遅れた場合、会社は申し出の日から2週間以内の範囲で休業の開始日を指定できる決まりになっています。つまり遅れても取れなくなるわけではなく、開始日が少し後ろにずれる可能性がある、ということです。退院日が見えてきた時点で、早めに人事へ相談しておくと調整しやすくなります。

Q. 介護休暇を取ったら、評価が下がりませんか?

介護休暇・介護休業を取ったことを理由に、解雇や降格、減給などの不利益な扱いをすることは法律で禁止されています。不安があれば、会社に相談窓口があればそこへ、なければ都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。

Q. 病院に「休みの相談をしている」と言ってもいいですか?

ぜひ言ってください。日程の調整ができるだけでなく、退院後に必要な介護の量の見通しも伝えられます。「介護休業を何日くらい取ればいいか」の相談に、病棟のスタッフが答えられることもあります。

まとめ|次にすること

  1. 病院の予定(入院の説明・家屋調査・カンファレンス・退院指導・退院日)を確認して、必要な休みの日数を数える
  2. 就業規則の「介護休暇」「介護休業」の項目を見る。分からなければ人事に「制度を教えてほしい」と聞く(会社には説明する義務があります)
  3. 半日単位の日は介護休暇を時間単位で申請する
  4. 退院後にまとまった時間が必要なら、介護休業を始めたい日の2週間前までに書面で申し出る

PTからひとこと

病棟で家族の方と話していると、「会社に言えない」の一言で、家屋調査に来られないまま退院日を迎える方がいます。制度は、あなたが使うためにあります。半日でも来ていただけると退院後の生活が変わるのを、病棟で何度も見てきました。

あわせて読みたい

参考:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」(制度の内容は2026年9月時点。会社ごとの就業規則・労使協定で異なる部分があります)

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