📅 2026年7月公開
「お金がないから、施設は無理かもしれない」——そう思いながらこのページにたどり着いた方へ。最初にお伝えしたいことがあります。
病院のリハビリ室で働いていると、施設の話になったご家族から「お金は、どうにか頑張ります」という言葉を本当によく聞きます。費用の心配は、特別なことでも恥ずかしいことでもありません。現場では、生活保護や費用軽減の制度の話が、ごく普通に出ています。
この記事では、理学療法士として現場で見てきたことをもとに、「頑張って払う」前に知ってほしい制度と施設、そして相談の切り出し方までお伝えします。
最初に種明かし|お金の話は、あなたから切り出していい
あまり知られていない現場の事情をひとつ。病院や施設の側から「お金は大丈夫ですか?」とは、なかなか聞けません。失礼にあたってしまうからです。私の病院でも、スタッフからお金の話を切り出す場面はほとんど見ません(生活の状況がよほど心配な方には、病院側からご家族に相談することもありますが、例外的です)。
実際には、施設の説明が進んで、最後に費用の話になったとき——そこでご家族が「正直、お金の準備が難しくて」と打ち明けて、初めて選択肢の相談が始まります。
つまり、お金の不安は、あなたから言っていいのです。言った瞬間から、専門職は「その予算でできる方法」を一緒に探し始められます。黙っていると、標準的な(=あなたの家計に合わないかもしれない)候補のまま話が進んでしまいます。

頑張って払う前に|負担を軽くする2つの制度
どちらも申請しないと使えない制度です。「知らなかった」で損をする人が一番多いところなので、先にこの2つだけ覚えてください。
① 負担限度額認定(食費・部屋代が安くなる)
特養や老健などの介護保険施設では、所得や資産が一定以下の方が市区町村に申請すると、食費と居住費(部屋代)が軽減されます。正式には「特定入所者介護サービス費」という制度です。世帯全員が住民税非課税であることなどの要件があります。くわしくは厚労省の解説ページ(サービスにかかる利用料)をどうぞ。
② 高額介護サービス費(払いすぎた分が戻ってくる)
介護保険サービスの自己負担(1〜3割の部分)には、月ごとの上限額が決められています。一般的な住民税課税世帯で月44,400円。これを超えた分は、市区町村に申請すると払い戻されます(厚生労働省の案内)。※食費・居住費・日用品代は対象外です。

この2つはどちらも、窓口はお住まいの市区町村(介護保険の担当課)。該当しそうなら、申請しない手はありません。
費用を抑えやすい施設|特養だけではありません
特別養護老人ホーム(特養)の相部屋
原則要介護3以上の方の住まいで、公的施設のため入居一時金がなく、月額も抑えめです。国の解説ページのモデル計算では、相部屋(多床室)で月およそ10万円強(要介護5・自己負担1割の例)。ここに①の負担限度額認定が使えれば、さらに下がります。施設の種類ぜんたいの整理はこちらにまとめています。
ケアハウス(軽費老人ホーム)
「介護はまだそれほど必要ないけれど、ひとり暮らしが不安。でも費用は抑えたい」という方向けの住まいです。収入に応じて利用料が段階的に決まるのが特徴で、月およそ4〜15万円程度(全国老人福祉施設協議会の概要資料より。施設や収入によって幅があります)と、所得が少ない方ほど低く設定されています。自立〜要支援くらいの方が中心です。
注意点もあります。一般的なケアハウスは介護が軽い方向けの住まいなので、介護度が上がると住み替えが必要になることがあります。また、費用を抑えられるぶん人気で、空きを待つ地域も少なくありません。
養護老人ホーム
経済的な理由などで自宅での生活が難しい高齢者のための施設です。ほかの施設と大きく違うのは、申し込み先が施設ではなく市町村だということ。市町村が状況を調査して入所を決める仕組み(措置といいます)なので、「対象になるかどうか」も含めて、まず市町村や地域包括支援センターへの相談から始まります。
こちらも注意点として、介護保険の施設ではないため、介護が重くなったときの対応には限りがあります。入所を決めるのは市町村なので、希望どおりの時期や施設になるとは限らない点も知っておいてください。
⚠️ 正直なところ
私の病院からの退院先としては、老健や特養が中心で、ケアハウスや養護老人ホームへ退院される方は多くない印象です(地域や施設の数にもよります)。だからこそ、この2つは「知っている人だけがたどり着ける選択肢」になりがちです。候補になるかどうか、窓口で名前を出して聞いてみてください。
施設だけが答えではありません
現場では、費用のことも考えて「自宅になんとか帰る」「子どもの家で同居することにした」という選択をされたご家庭も見てきました。ご本人とご家族が納得のうえなら、それも立派な答えです。
ただ、正直に付け加えると——費用のためだけに、無理をして在宅や同居を選ぶと、介護するご家族が倒れてしまうことがあります。デイサービスやショートステイなどを組み合わせて負担を分散させる方法もあるので、「施設か、家か」の二択で追い詰められる前に、在宅介護の限界サインも知っておいてください。
相談の切り出し方|金額の目安を口にして、一緒に決める
相談先は、要介護認定を受けていればケアマネジャーさん、まだなら地域包括支援センター(無料・市役所に聞けば場所を教えてもらえます)。そして伝え方はシンプルにこれだけです。
「月◯万円くらいと考えているのですが、実際どうでしょうか。このあたりでできる方法はありますか?」
相場が分からないうちに「いくらまで」と言い切る必要はありません。目安の金額を口にして、あとは相談しながら一緒に決めていく——それで十分伝わります。専門職にとっても、目安があるだけで具体的な提案がぐっとしやすくなります。年金額や貯えの状況も、正直に伝えるほど相談は早く進みます。

よくある質問(Q&A)
Q. 年金だけでも入れる施設はありますか?
A. 年金の額と施設の種類によりますが、特養の相部屋+負担限度額認定の組み合わせなど、年金の範囲に収まるケースはあります。「年金が月◯万円です」と地域包括支援センターに伝えて、その範囲の選択肢を聞くのが確実です。
Q. 生活保護を受けていても、施設に入れますか?
A. 入れる施設はあります。特養など生活保護の方を受け入れている施設は実際にあり、現場でも生活保護と施設の話は普通に出ています。担当のケースワーカーさんと、ケアマネジャーさん・地域包括に早めに相談してください。
Q. 家を売らないと無理でしょうか?
A. いきなり大きな決断をする必要はありません。まず①負担限度額認定②高額介護サービス費③費用を抑えやすい施設——ここまで確認してからでも遅くないです。家の売却や住み替えは取り返しがつかない選択なので、不動産会社ではなく、利害のない地域包括支援センターに最初に相談することをおすすめします。
Q. 病院や施設にお金の話をするのは失礼ではありませんか?
A. 逆です。病院側は失礼になるからと聞けずにいて、ご家族が切り出してくれるのを待っています。費用の心配を打ち明けたご家族が、そこから制度や施設の具体的な相談に進んでいく場面を、私は何度も見てきました。
まとめ|「お金がないから無理」と決める前に
- お金の話は、あなたから切り出していい。専門職はそれを待っている
- 申請しないと使えない制度が2つ——負担限度額認定と高額介護サービス費
- 費用を抑えやすい施設は特養だけではない。ケアハウス・養護老人ホームという道もある
- 費用のために無理な在宅・同居を選ぶと共倒れのリスク。二択の前に相談を
- 伝え方は「月◯万円くらいと考えているのですが、どうでしょうか」——目安を口にするほど相談は早い
施設の種類の全体像は老人ホームの種類と費用をわかりやすくに、施設を考え始めた時の気持ちの整理は親を施設に入れる罪悪感にまとめています。あわせてどうぞ。
📩 最後まで読んでいただきありがとうございます
「うちの場合は、月いくらまでなら現実的なんだろう?」——お金の事情はご家庭ごとに違います。ひとりで計算して諦める前に、お気軽にどうぞ。理学療法士として、状況に合わせてお答えします。
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