介護保険のデメリットは本当?よく聞く不安7つを現役PTが検証

虫眼鏡でチェックする猫と鉛筆を持つリスのイラスト。介護保険にデメリット?よく聞く不安7つをPTが検証 介護

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ケレン(現役理学療法士)
この記事を書いた人:ケレン(現役理学療法士)
病院で毎日、高齢の患者さんとご家族の「退院後の生活」に向き合っています。
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「介護保険って何? 私、保険には入っていないのだけど……」——病棟で、実際に聞いた言葉です。介護保険は40歳から全員が保険料を払っている公的な保険なのですが、仕組みも申請の仕方も知らないまま65歳を迎える方が本当に多いと感じます。

そして、いざ調べようとすると検索結果に並ぶのが「介護保険 デメリット」という言葉。不安になりますよね。

家族
家族

介護保険って、デメリットもあるって聞いたけど…申請して大丈夫?

ケレン
ケレン

よく言われる不安を、現場の目で1つずつ検証してみましょう。ほとんどは誤解です。ただし1つだけ、本当に知っておいてほしいことがあります

この記事では、「介護保険のデメリット」としてよく語られる7つを、病院勤務の理学療法士が検証します。先に全体像をどうぞ。

よく聞く不安 検証結果
① 手続きが面倒・時間がかかる 半分ホント(でも代行あり)
② 使うときにお金がかかる ホント(ただし月数百円の世界も)
③ 調査で実際より軽く判定される 対策できる
④ 「要介護」の言葉に本人が傷つく 伝え方で変わる
⑤ 他人が生活に入ってくる 合わなければ変更できる
⑥ 限度額を超えたら全額自費 普通は超えない設計にする
⑦ 医療保険のリハビリが受けにくくなる 唯一の「本物」。申請前に知ってほしい

それでは順番に見ていきます。前提となる仕組み(誰が対象で、どう申請するか)は介護保険の申請から認定までの流れにまとめてあるので、初めての方はそちらからどうぞ。

① 手続きが面倒・時間がかかる → 半分ホント

申請から認定までは1か月ほどかかるのが一般的で、「面倒そう」という印象は間違いではありません。ただ、現場から見ると2つ、安心材料があります。

  • 申請は代行してもらえます。地域包括支援センターやケアマネジャーが代わりに動いてくれるので、家族が役所に何度も通うようなことは通常ありません
  • 入院中なら、病院が進めてくれます。退院支援の看護師や相談員(ソーシャルワーカー)に「申請したい」と伝えれば、流れに乗ります。実際、ご家族から相談員に「もう申請してほしいです」と話して進むケースはとても多いです

② 使うときにお金がかかる → ホント。ただし金額感は誤解されがち

保険料を払っていても、サービス利用時には1〜3割の自己負担があります。何割になるかは所得などによる判定次第です。

ただ、金額感は知っておいて損はありません。たとえば歩行器のレンタルは1割負担なら月200〜500円前後。詳しくは杖や歩行器はレンタルと購入どっち?で解説していますが、「思ったより小さい負担で暮らしが楽になる」のが実感に近いところです。

③ 調査で実際より軽く判定される → 対策できる

「認定調査の日だけ親が元気なフリをして、軽く判定されてしまった」という話はよく聞きます。ただ現場の感覚では、あれは「フリ」というより、他人と会うのだから、いつもよりきちんとして見せたいという自然な気持ちです。責められることではありません。

とはいえ、本人が何か対策をする必要はありません。むしろ正直に、ありのままで受けるのが一番です。実際より良く見せる必要も、悪く見せる必要もありません。そのうえで、緊張や遠慮で伝わりきらない分は家族が補いましょう。普段の様子(夜のトイレ、着替え、転びかけた場面など)をメモにして調査員に渡す・同席して伝えるのが定番の方法です。なお、調査は相手に合わせて質問が変わる印象で、しっかりしている方にはしっかりしているなりの確認がされます。「うまく言えないと損をする」と過度に心配しなくて大丈夫です。

④ 「要介護」の言葉に本人が傷つく → 伝え方で変わる

「要介護」「要支援」という言葉は、「あなたは一人ではだめだ」と言われたような印象を与えてしまうことがあります。ここは正直、制度の言葉選びが良くないと思っています。

ただ、認定を受けたからといって、本人の毎日が急に変わるわけではありません。杖や手すりが増えて、暮らしが少し楽になる——実際にはそれくらいの変化であることがほとんどです。伝えるときは「介護されるため」ではなく「転ばないための道具を安く借りられるから」のように、目的から話すのがおすすめです。このあたりの声かけは親が杖を嫌がる理由と声かけで書いた考え方がそのまま使えます。

⑤ 他人が生活に入ってくる → 合わなければ変更できる

ケアマネジャーやヘルパーなど、新しい人間関係が増えるのは事実で、相性もあります。ただ、まず知っておいてほしいのは、ケアマネジャーは「生活を管理する人」ではなく、医療や介護サービスと暮らしをつなぐ橋渡し役だということ。すべてを託すわけでも、その人の判断で生活を変えられてしまうわけでもありません。主導権はあくまで本人と家族にあります。そのうえで、合わなければケアマネも事業所も変更できます。「一度決めたら我慢するしかない」制度ではありません。

⑥ 限度額を超えたら全額自費 → 普通は超えない設計にする

要介護度ごとに月の利用限度額があり、超えた分は全額自費——制度上はその通りです。ただ実際は、ケアマネジャーが限度内に収まるようにプランを組むのが基本なので、知らないうちに大きな請求が来るような性質のものではありません。

介護保険の限度額のイメージ(要介護2の例)。月19,705単位≒19万7千円分の円グラフをサービスで埋めていき、1割負担なら月約1万1千円

⑦ 医療保険のリハビリが受けにくくなる → 唯一の「本物」です

さて、ここまでは「誤解」や「対処できるもの」でした。最後の1つだけは、申請の前に知っておいてほしい本物の注意点です。

リハビリには、大きく分けて医療保険で受けるもの介護保険で受けるものの2つの系統があり、場面によっては介護保険側が優先される仕組みになっています。そして2つは目的が少し違います。

医療保険のリハビリ 介護保険のリハビリ・デイ
主な目的 機能の回復を目指して集中的に行う 生活を続ける力を保つ・交流の場
向いている時期 手術後・発症後の回復を狙える時期 状態が落ち着いてからの維持期

どちらが上等という話ではありません。ただ、現場でときどき見るのがこんな場面です。

手術直後の、機能の回復を狙える大切な時期に、良かれと思って介護保険の利用を急いだ結果、回復を目指す集中的なリハビリから、レクリエーション中心のデイサービスへ軸足が移ってしまう——。本人は「もっとリハビリを頑張りたかったのに」と感じているのに、です。

介護保険の申請自体が悪いのではありません。タイミングと使い方の問題です。手術後・退院直後でリハビリを続けている方は、申請やサービス利用を始める前に、主治医かリハビリスタッフに「介護保険を使い始めようと思うが、今のリハビリはどうなるか」とひと言聞いてください。これだけで行き違いのほとんどは防げます。

この記事の結論

介護保険の「デメリット」と言われるものの多くは、誤解か、対処法があるものでした。ためらって申請を遅らせるほうがもったいない、というのが現場の実感です。ただしリハビリ中の方だけは、始める前に主治医・リハスタッフにひと言相談を。

※制度の細かい条件や優先関係は、病状・地域・時期によって異なります。実際の判断は、主治医・ケアマネジャー・市区町村の窓口でご確認ください。

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