「もっと何かしてあげればよかった」——病院で働いていると、ご家族からこの言葉を本当によく聞きます。
この記事は、私・ケレンがなぜ「介護×転倒予防」のブログを書いているのか、というお話です。少し長い自己紹介ですが、読み終わる頃に「この人はこういう気持ちで書いているのか」と知っていただけたらうれしいです。
接骨院の先生に憧れた学生時代
学生時代はずっと運動部でした。野球、水泳、陸上競技、体操競技——いろいろな競技を渡り歩いてきましたが、その分、怪我もたくさんしました。
そのたびにお世話になったのが、町の接骨院です。痛かった体が少しずつ動くようになっていく喜び。そして「怪我を治してくれる人」への尊敬。将来は自分も、体を治す仕事がしたい——そう思うようになりました。
先生の「もったいないぞ」で開けた道
進路を考えていた高校時代、部活の先生が私の成績を見て「頭がいいのに、もったいないぞ」と、いくつかの道を紹介してくれました。そのひとつが、理学療法士でした。
調べるほどに、体の仕組みを深く学べるこの仕事に惹かれていきました。進学先は県立大学の理学療法学科へ。学費を抑えられる公立を選んだのは、正直に言えば親孝行のつもりでもありました。——いま思えば、このブログで伝えたいことの原点は、ここにあったのかもしれません。
スポーツの若者を診るつもりが、高齢者医療の世界へ
もともとは、自分と同じようにスポーツで怪我をした若い人を支えたいと思っていました。でも学びを深めるうちに関心は広がり、就職したのは「高齢の方が中心で、時々スポーツで怪我をした若者も来る」病院。整形外科・内科の病棟で、毎日高齢の患者さんとそのご家族に向き合っています。
そこで知ったのは、リハビリの技術だけでは解決できない世界でした。退院しても、家に帰ってからの生活がある。そして患者さんの後ろには、いつも「心配しているご家族」がいる——。
忘れられない、ふたりの患者さん
※ここでご紹介するエピソードは、ご本人が特定されることのないよう、細部を一部変更しています。
圧迫骨折で入院された、あるおばあちゃん。自主練習にも意欲的で、毎日のリハビリを楽しみにしてくれる方でした。しかし回復が順調に進んでいたある日、ご自宅でひとり暮らしをしていたご主人が、突然亡くなられたのです。彼女は急いで退院していきました。
圧迫骨折は連鎖しやすい骨折です。その方は後日、再び圧迫骨折で入院されました。それでも、また前を向いてリハビリに取り組み、介護保険で歩行補助具と住まいを整えて、ひとり暮らしへ帰っていかれました。退院後は、新しい趣味のお稽古も始められたそうです。「何歳からでも、人は歩き直せる」——そう教えてくれた方でした。
もうひとり、コミュニケーションに少し工夫が必要な男性の患者さん。伝わる方法を一緒に探しながら、リハビリを続けました。この方は奥さまの介護を献身的にしてこられた方で、いわゆる老々介護の無理が重なっての骨折でした。回復は順調でしたが、私が心配だったのは退院後です。「また奥さまのために無茶をしないだろうか」と。
退院後、デイサービスに通い始めたその方が、こう言ってくれました。
「私はあなたのやってくれるようなリハビリがしたい。うちに来てやってもらいたいなぁ」
うれしい言葉でした。同時に、悔しい言葉でもありました。病院の理学療法士である私は、退院したあとのご自宅までは行けないからです。
「うちに来てやってもらいたい」への、私なりの答え
あの言葉に、ずっと答えを探していました。病院の理学療法士である私は、退院したあとのご自宅までは伺えません。でも——パソコン越しなら、ネットを通じてなら、退院後のご家庭にも届く。病院の外で悩んでいる、もっと多くのご家族の力になれるかもしれない。もともとパソコンに向かうのが好きだったこともあり、ブログという形を選びました。
書くテーマは迷いませんでした。頭に浮かんだのは、病院で毎日お会いするご家族の顔です。「退院後の生活が心配」「遠くに住んでいて、すぐ助けに行けない」「もっと何かしてあげればよかった」——この不安に、私の知識と経験が役に立つはずだと思ったのです。
そして、書くうえで自分にルールを課しています。紹介するのは、生活をより豊かにできると心から思える物だけ。介護保険をはじめ、知っている制度・社会的に有効な制度は余さずお伝えする。ネット越しでも、病院にいるときの私と同じ誠実さでありたいからです。
私が大切にしていること
理学療法士として、大切にしていることがふたつあります。
それは、回復の限界を先に決めないこと。経験を重ねるほど「この怪我ならこのくらいで止まる」という予測は正確になるかもしれません。でも私は、予測より先に、目の前の方に寄り添いたい。あの、新しい趣味を始めたおばあちゃんのように、人は何歳からでも変わっていけると信じているからです。
もうひとつは、学び続けることです。勉強会や研修会に参加し、高齢者や小学生を対象にした地域のイベントにも積極的に出ています。「勉強熱心だけが取り柄」と言われるくらいで、ちょうどいいと思っています。
あなたに伝えたいこと——恩返しは「今」から
入院されている患者さんとお話ししていると、意外なことに気づきます。皆さん、これまでの生活にけっこう満足されているのです。そして口を揃えて、こうおっしゃいます。「今まで通りの生活に戻りたい。家に帰りたい」と。
特別な暮らしがしたいわけではないんです。いつもの家で、いつもの毎日を続けたい。それが、多くの高齢の方の願いです。
だからこそ、転倒や怪我を「起きてから」ではなく「起きる前」に防ぐことに、大きな意味があります。何かが起きてからでは、間に合わないことがある。「もっと何かしてあげればよかった」と後悔してほしくない。
親御さんへの恩返しができるのは、「今」です。
このブログが、その「今できること」を見つけるお手伝いになりますように。ひとりで悩まず、いつでも覗きに来てください。



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