「入院の費用って、結局いくらかかるんですか?」——病棟でリハビリをしていると、ご家族からこの質問をよく受けます。正直に言うと、理学療法士の私は金額を答えません。答えられないのではなく、答えてはいけない立場だからです。でも、ご家族がその場で不安そうにしているのは、よく分かります。

親が入院。お金がどのくらいかかるのか、誰に聞けばいいのかも分からない…

聞く相手と、先に準備しておく物があります。それだけで「いきなり30万円」を避けられることが多いんです
この記事では、病院勤務の理学療法士が、入院費用について「誰に聞くか」「何を準備するか」と、病棟で見てきたお金にまつわる誤解を、家族向けに整理します。
先に結論
①お金の話は医事課(受付)か相談員に。迷ったら信頼できるスタッフにつないでもらう ②高額療養費制度で月の上限がある ③限度額適用認定証かマイナ保険証を用意すると、窓口の支払いが最初から上限額で済む ④概算を先に聞いておく
お金の話は、誰に聞けばいい?
病棟で「費用はいくら?」と聞かれたとき、私がいつもお願いしているのはこの2つです。
- 病棟にいる、受付のような服装の職員(医事課)に聞く——費用を計算している部署なので、いちばん確実です
- 看護師に「お金のことを聞きたい」と伝えて、つないでもらう——誰に聞けばいいか分からないときは、これで大丈夫です
リハビリスタッフや主治医は費用の計算をしていないので、金額そのものは答えられません。ただ、「誰に聞けばいいか分からない」ときの入り口にはなれます。
迷ったら、信頼できるスタッフに「つないでもらう」
リハビリのスタッフは、毎日1時間近く顔を合わせて話をする相手なので、患者さんやご家族と信頼関係ができやすいとよく言われます。お金の話に限らず、リハビリのスタッフに限らず、あなたにとって「この人なら聞きやすい」と思えるスタッフに、まず聞いてみてください。
答えを出してもらうというより、担当の人に話をつないでもらう・誰に聞けばいいかのヒントをもらう、そんな使い方で大丈夫です。私も「それは医事課の人が詳しいので、声をかけておきますね」と、看護師や医事課につなぐようにしています。
そのうえで、お金の正式な窓口は医事課と相談員、と覚えておいてください。
入院費用を左右する「高額療養費制度」
入院費用が心配な方に、まず知っておいてほしい制度です。「なんとなく聞いたことはある」という方が多い一方で、手続きの仕組みまで知っている方は少ない印象です。
一言でいうと、1か月の医療費の自己負担に「上限」がある制度です。上限を超えた分は、健康保険から戻ってきます。

ポイントは、図の下半分です。同じ制度でも、「何も用意しない」と「事前に準備する」で、窓口で払う金額が大きく違います。
限度額適用認定証とは?
加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険など)に申請してもらう証明書で、病院の窓口に出すと最初から上限額までの支払いで済むようになります。あとから申請して戻ってくるのを待つ必要がありません。
マイナ保険証を使う場合は、この認定証がなくても同じ扱いになります(窓口で「限度額情報の提供に同意」するだけ)。入院が決まったら、どちらかを準備しておくのがおすすめです。
※食事代・差額ベッド代・先進医療などは高額療養費の対象外です。上限額は年収・年齢で変わり、制度は改定されることがあります。正確な区分と手続きは厚生労働省の高額療養費制度のページ、加入している健康保険、病院の医事課でご確認ください。
病棟で見てきた「お金の誤解」
「保険に入っていてよかった」——本当にそう?
入院中、「民間の医療保険に入っていてよかったわ」という声は本当によく聞きます。給付金が下りると、その場では得をしたように感じます。
ただ、保険は「不幸の宝くじ」のようなもので、これまで払ってきた保険料と、実際に保障される金額を並べて考えると、必ずしも得とは言えないことも多いです。ここは理学療法士の専門ではないので、お金の専門家(ファイナンシャルプランナーなど)の解説を見てほしいところですが、現場からひとつだけ。「入っていてよかった」の空気に流されず、自分にとって本当に必要かを一度検討することをおすすめします。これは高齢者向けの民間介護保険も同じです。
お金で混乱すると、トラブルになりやすい
もうひとつ、現場で感じていることがあります。お金のことで頭がいっぱいになっている患者さんは、トラブルになりやすいのです。「いくらかかるのか」「払えるのか」が分からないままだと、治療やリハビリに集中できず、スタッフとのやり取りもぎくしゃくしがちです。
認知機能が下がっている方がお金をとても気にされているときは、「お金のことはご家族が見てくれていますよ」とお伝えして、安心してもらうことがあります。ご家族側でも、「お金は私が把握しているから大丈夫」と本人に伝えるだけで、本人の落ち着きが変わることがあります。
家族がまずやること、4つ
- 医事課か相談員(ソーシャルワーカー)に、早めに聞く——誰に聞けばいいか迷ったら、信頼できるスタッフに「誰に聞けばいい?」と聞いて、つないでもらってください。「だいたいの概算」も一緒に聞いておきます。あとから戻ってくるお金でも、その場で一時的に必要になることがあるからです
- 限度額適用認定証を申請する、またはマイナ保険証を使う——上で説明した、窓口の支払いを最初から上限額にする準備です
- 加入している民間保険の給付条件を確認する——入院日数や手術の条件で、出る・出ないが変わります
- 病院の外で使える公的制度を調べる——傷病手当金・医療費控除・自治体の助成など、入院をきっかけに使える制度があります。こういう「自分の状況で何が使えるか」は、検索するより最近のAI(ChatGPTやGeminiなど)に状況を伝えて聞くと整理が早いです。最後は窓口で確認を
⚠ この記事で書かないこと
病気ごとの費用の目安や、保険商品の良し悪しは、理学療法士の専門外なので書いていません。金額は必ず病院の医事課と、加入している健康保険で確認してください。
入院中のお金と一緒に考えたいこと
退院が近づくと、介護保険の申請の話が出ることがあります。申請の流れは介護保険の申請から認定までの流れに、手術直後の申請で注意したい点は介護保険のデメリットは本当?にまとめています。入院中のリハビリで準備するものは入院中のリハビリって何をするの?をどうぞ。退院後、食事の準備が負担になりそうなときは、高齢の親の配食サービス|介護保険は使える?自治体の助成と使い分けも参考にしてください。
よくある質問
Q. 退院時に一度に払えないときは?
相談員に早めに伝えてください。分割の相談や、使える制度の案内をしてもらえます。「払えないかも」を抱え込むのが一番よくありません。
Q. 年金暮らしの親の場合、上限額は?
所得区分によって上限額が下がります(住民税非課税の方はかなり低くなります)。加入している健康保険の窓口で区分を確認してください。
Q. 高額療養費の申請は、誰がするの?
加入している健康保険に対して、本人か家族が申請します。健康保険によっては自動で振り込まれる場合もあるので、病院の医事課で「申請が必要か」を聞くのが早いです。
まとめ
入院費用の不安は、「誰に聞くか」と「何を準備するか」が分かるだけで、かなり軽くなります。医事課・相談員に早めに聞く、限度額適用認定証かマイナ保険証を用意する、概算を聞いておく、使える制度を調べる——この4つを、迷ったら信頼できるスタッフにつないでもらいながら、入院が決まった段階で進めてみてください。
お金のことで困ったら、病院の相談員へ。制度の全体像で迷ったら、お気軽にお問い合わせください。それではまた、お大事に!


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