高齢者が転倒した後どうする?|PTが教える受診の判断と再発予防

転倒後の高齢者を心配そうにサポートするイラスト。猫がチェックリストで状態を確認し、リスが温湿布とタオルを持ってきている様子 介護

「転んだけど、救急車を呼ぶほどじゃない気がして…でも大丈夫かどうか心配で」

理学療法士として患者さんのご家族からよく受ける相談のひとつです。転倒後の対応に迷うのは当然です。「大したことないと思っていたら、実は骨折していた」というケースが、高齢者の転倒では珍しくないからです。

この記事では、緊急性が低そうに見える転倒後に「どう判断し、何をすべきか」をPTの視点から解説します。

📌 こんな方に読んでほしい記事です

  • 親が転倒したが、救急車を呼ぶほどではなさそうな方
  • 転倒後に「この辺が痛い」と言っているが受診すべきか迷っている方
  • 転倒後、再発を防ぐために何をすればいいか知りたい方

まず確認|これがあったらすぐ受診してください

「大したことない」と思っていても、以下のサインがある場合は早めに整形外科を受診してください。放置すると取り返しのつかない状態になることがあります。

⚠️ すぐ受診すべきサイン

  • 股関節・お尻まわり・腰・背中に強い痛みがある
  • 立てない・足に体重をかけると痛い
  • 頭を打った(意識がなかった・ぼんやりする・吐き気がある場合は救急へ)
  • 手首・肩に強い痛みや腫れがある(手をついて転んだ場合)
  • 翌日以降、じわじわ痛みが強くなってきた

特に注意してほしいのが「翌日以降に痛みが出てくる」パターンです。転倒直後は興奮状態で痛みを感じにくいことがあり、翌朝起き上がろうとして初めて「動けない」と気づくケースがあります。

高齢者の転倒で特に怖い「圧迫骨折」

理学療法士として多くの患者さんを担当してきた中で、「転んだ後しばらくして腰が痛くなった」というケースの圧迫骨折を何例も経験しています。

圧迫骨折とは

背骨(椎体)が上下から押しつぶされるように潰れる骨折です。高齢者に多い骨粗しょう症があると、転倒の衝撃だけでなく、くしゃみや少し無理な姿勢でも起きることがあります。

怖い理由は「痛みが遅れて出ること」

圧迫骨折は、骨折した直後は「少し腰が重い」程度にしか感じないことがあります。数日後〜1週間後に「動くと腰が痛い」「起き上がれない」という形で症状が出てくるのが典型的なパターンです。

「転倒から1週間後に腰の痛みを訴えた」というご家族の話は、臨床でも珍しくありません。転んだ後に腰や背中の違和感が続く場合は、日数が経っていても受診することをおすすめします。

大腿骨頸部骨折も要注意

股関節の付け根(大腿骨頸部)の骨折は、高齢者の転倒による骨折で最も深刻なもののひとつです。「立てない」「足を動かすと股関節が痛い」という場合は、すぐに受診してください。手術が必要になることが多く、早期対応が回復に直結します。

受診するなら何科?

転倒後の痛みの受診先は「整形外科」一択です。

「内科でもいいですか?」「かかりつけ医に行けばいいですか?」という質問を受けることがありますが、骨折の有無を確認するためのX線(レントゲン)検査は整形外科で行います。内科やかかりつけ医では対応できないことがあるため、転倒後の痛みは最初から整形外科へ向かうのが確実です。

受診時に伝えると良いこと

  • いつ・どこで・どのように転んだか
  • どこが・どんなふうに痛むか(動いたとき・じっとしているときで違うか)
  • 頭を打ったかどうか
  • 普段飲んでいる薬(骨粗しょう症の薬など)

転倒を繰り返さないためにできること

受診して骨折がないと確認できたら、次に考えるべきは「また転ばないための対策」です。

① 環境を見直す

転倒が起きた場所・状況を振り返ることが大切です。「夜中にトイレへ行く途中」「玄関で靴を履こうとして」「お風呂場で」——多くの場合、転倒には原因となる「環境のリスク」があります。

工事不要で今すぐ対応できるグッズも多くあります。転倒が起きた場所を優先して整えてください。

【PT監修】高齢の親の転倒・介護準備まとめ|場所別ガイド

玄関・お風呂・寝室・トイレ・リビング、場所別の転倒対策をまとめています

② 体力・バランス能力を回復させる

転倒後は痛みや不安から「動くのが怖い」という気持ちになりやすいです。しかし、動かないでいると筋力・バランス能力がさらに低下し、次の転倒リスクが上がります。

整形外科で骨折がないと確認できたら、できる範囲で体を動かすことが大切です。痛みが続く・動き方がわからないという場合は、理学療法士に相談することをおすすめします。リハビリは骨折後だけでなく、転倒予防のためにも受けることができます。

③ 転倒した原因を振り返る

「なぜ転んだのか」を整理しておくことが、再発防止につながります。

  • 暗かった → センサーライトの設置
  • 足元のものにつまずいた → 床の片付け・滑り止めマット
  • 立ち上がりでふらついた → 手すりの設置・高さの見直し
  • 眠くてぼんやりしていた → 夜間トイレの回数を減らす工夫

PTからひとこと|転倒後の対応が、その後を大きく左右する

転倒したこと自体を責める必要はありません。大切なのは「その後の対応」です。

痛みが軽くても、高齢者の転倒後は整形外科での確認をおすすめします。特に腰・背中・股関節の違和感は、圧迫骨折や大腿骨骨折のサインである可能性があります。「大したことない」と思っていた転倒が、実は骨折だったというケースを、PTとして何度も経験してきました。

骨折がないと確認できたら、次は環境と体力の両面から再発予防を進めましょう。一度に全部やる必要はありません。転倒が起きた場所から、ひとつずつ整えていけば大丈夫です。

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