「親が入院することになったけど、リハビリって何をするの?」「何か準備しておいた方がいいものはある?」
入院が決まった瞬間、ご家族のほうが頭の中が真っ白になることがあります。面会に来られたご家族から「杖は何がいいですか」「靴ってどんなものがよいですか」「家に準備しておいた方がいいものはありますか?」とよく聞かれます。
この記事では、現役の理学療法士(PT)として、入院中のリハビリの流れ・期間の目安・準備しておくと本当に助かる持ち物をまとめました。介護保険が使える場合はそちらを最優先にしながら、事前に知っておくと安心できることをお伝えします。
入院中のリハビリ、実際に何をするの?
「リハビリ」と聞くと歩く練習だけをイメージされる方が多いかもしれません。実際は、体の状態に合わせて少しずつ段階的に進んでいきます。

手術直後〜数日:まず状態の確認から
まず確認するのは、手術を無事に乗り越えられたか、感覚の異常や麻痺がないかです。問題がなければ、ベッドの上で足を動かす、お話をする、ベッドを起こして体を起こしてみるところから始めます。
その後、ベッドのふちに座ってみる、ベッドサイドで立ってみる、車いすに乗ってみる、という順番で少しずつ進めていきます。
状態が安定してきたら:歩く・生活動作の練習へ
体の状態が安定してくると、トイレへの移動の練習や歩く練習へと進みます。さらに必要な方は、階段の昇り降りの練習も行います。
ここで知っておいていただきたいのは、全員が同じゴールを目指すわけではないということです。「家の中を伝い歩きできれば十分」という方もいれば、「また外に買い物に行きたい」という方もいます。その方の生活に合わせて、目標もリハビリの内容も一人ひとり違います。階段の練習までするかどうかも、退院後の生活環境によって変わってきます。
もう一つ。回復は右肩上がりの一直線ではありません。今日うまく歩けても、翌日は体調が優れないこともあります。「昨日できたのに今日はできない」という日があっても、それは回復の途中として自然なことです。ご家族も焦らず見守っていただけると、患者さんにとっても安心につながります。
入院リハビリはどのくらい続く?期間の目安
「リハビリのために入院している」という言葉をよく聞きます。退院の目安は日数そのものではなく、「家に帰るための動作が整ったかどうか」で判断することがほとんどです。
具体的には、「自宅に戻っても家族や同居者が対応できそう」と判断できたタイミングで、ケアマネジャーさんと連携しながら福祉用具(手すり・歩行器など)を準備し、退院に向けて進めていきます。
- 整形外科(骨折・手術後など):1か月前後が多い印象です
- 地域包括ケア病棟:入院できる期間が最長60日(約2か月)と決まっているため、長くても2か月ほど、という方が多いです
- 回復期リハビリ病棟:脳卒中など病気によっては、もう少し長く入院できる場合もあります(病気の種類ごとに上限が決まっています)
また、手術や治療がうまくいって、医師から「1〜2週間ほどで退院できそうですよ」と早い段階で見通しを伝えられることもあります。反対に、傷の状態や治療の経過によっては、もう少し入院が続くこともあります。
いずれにしても、退院の時期は体の状態しだいです。担当の医師やPTから説明を受けながら、見通しを立てていただくと安心です。
「リハビリを嫌がる…」そんなときご家族にできること
「痛いから」「疲れるからもういやだ」「もう歩けるから大丈夫」——リハビリを嫌がる方は、実は少なくありません。ご家族としては「やってくれないと退院できないのに…」と、もどかしく感じることもあると思います。
私たちPTも、無理強いはしません。「無理しなくていいですよ。でも、少しだけ歩いてみませんか?」「◯◯さんが歩くところを見たいんです」と、ご本人が一歩を踏み出しやすい言葉を選んでいます。そんなとき、ぐっと力になるのがご家族の存在です。「ご家族が“歩いてね”って言ってましたよ」とお伝えすると、ふっと表情が変わる方も多いんです。
ですから、ご家族に無理に励ましてほしいわけではありません。むしろ「まだこのままじゃ帰れないでしょ」と追い詰めるような言い方は、ご本人を頑なにさせてしまうこともあります。
⭐ PTからひとこと
いちばんの力になるのは、会いに来てくださること、そのものだと感じています。「リハビリやれってさ、やってるのにな」と愚痴をこぼしながらも、ちゃんと取り組んでいる方をたくさん見てきました。文句のひとつも言える相手がいることが、きっと頑張る支えになっているのだと思います。会いに来て、できたことを一緒に喜ぶ。それだけで十分です。
リハビリに適した服装・避けたい服装
「リハビリ中の服装はなんでもいい」と思われがちですが、PTの立場からお伝えすると、服装ひとつで診察やリハビリのしやすさがかなり変わります。

ズボン(下半身):ゆったり伸び縮みするもの
裾にかけて少し細くなったズボンや、伸縮性のあるスウェット・ジャージなど、ゆったりして伸び縮みする素材のものがおすすめです。
理由は、膝や足首の手術の傷(創部)を確認したり、腫れの変化を比べたりするためです。きつめのデニムや締め付けの強いズボンだと、毎回カーテンを閉めて脱いでいただく手間がかかりますし、傷に直接ふれて確認することもできません。
上着(上半身):ゆったりめ・前開きが安心
ゆったりとしたもの・前開き(ボタン式)のものがおすすめです。とくに肩の手術後は腕を上げる動作がつらくなるため、頭からかぶる服より、前開きの上着のほうが着替えがぐっとラクになります。
避けたい服装
- きつめのジーンズ・スキニーパンツ(膝・股関節の確認ができない)
- 首元が詰まった、伸びないトップス(肩の手術後は脱ぎ着が大変)
- サンダル(くわしくは次でお伝えします)
家族が準備しておくと助かる持ち物リスト
面会に来られたご家族から「何か持ってきた方がいいものはありますか?」とよく聞かれます。病院から渡される入院案内にも記載はありますが、ここではPTとして「これは本当に助かる」と感じるものを、理由とあわせてまとめました。
① リハビリに適した靴
靴は、入院前に準備しておくことを強くおすすめします。リハビリでは、転倒のリスクを少しでも下げられる靴を選ぶことがとても大切だからです。

靴選びの4つのポイント(大切な順)
- かかとがしっかりあること……いちばん大切です。かかとが安定することで、ふんばりがきき、転びにくくなります
- 足の幅(足囲)にゆとりがあること……入院中は足がむくみやすいため、普段より少し幅広だと安心です
- マジックテープで留められること……介助する方が、片手で体を支えながら、もう一方の手で履かせやすくなります
- かがまずに履けること(スリップインタイプ)……立ったまま足を入れるだけ。腰やひざをかがめるのがつらい方に向いています
⚠️ 実は「サンダル」はおすすめできません
「脱ぎ履きがラクだから」とサンダルを選ばれる方がとても多いのですが、これは意外な落とし穴です。かかとが固定されないサンダルは、歩行練習の最中に脱げたり、つまずいたりして転倒の原因になります。靴選びで大切なのは「履きやすさ」だけではなく、「安全に歩けること」。ここはぜひ覚えておいてください。
それでは、上のポイントを満たした靴を具体的にご紹介します。選ぶときは、「ご本人が自分で履けるかどうか」を目安にすると迷いません。介助が必要な方にはマジックテープ式、ある程度ご自分で履ける方にはスリップインタイプが向いています。
まずは、マジックテープで留めるタイプの介護シューズ。軽くて滑り止めが付いており、足の出し入れがしやすいので、介助する方にとっても扱いやすい一足です。むくんだ足にも合わせやすく、入院中の「最初の一足」として選びやすいと思います。
次に、かがまずに履けるスリップインタイプ。かかとを踏まずにスッと足を入れられるので、ご本人が一人で履きたい場面でも重宝します。かかともしっかりしているので、リハビリにも安心して使えます。男性用・女性用それぞれご紹介します。
スリップインタイプ(メンズ)
スリップインタイプ(レディース)
② T字杖(できれば早めに用意を)
退院後にT字杖を使いそうな場合は、入院前か、入院して早めの時期に用意しておくことをおすすめします。理由は大きく2つあります。
理由1:手続きに思ったより時間がかかる
病院では、業者さんに来てもらって杖を選ぶことができます。ただ、お金のやり取りはご本人と業者さんの間で直接行うことになり、病院スタッフは間に入れません。「杖を選ぶ → ご家族に確認 → 発注 → 届くまで約1週間」という流れになり、これだけで退院が数日〜1週間ほど延びてしまうこともあります。
理由2:練習用の杖が、いつも使えるとは限らない
病棟で貸し出せる杖の数には限りがあります。ほかの患者さんが使っていると、練習したいときに自分が使えない、ということも起こります。自分専用の杖が一本あれば、好きなタイミングでしっかり練習できます。
⭐ PTからひとこと
リハビリ担当としても、退院に間に合うよう早めに手続きを進めます。それでも正直なところ、「ご家族が先に用意してくださっていると本当に助かる…!」というのが本音です。
どんな杖を選べばいいか迷ったら、こちらの記事が役に立ちます。
種類ごとの違いや、失敗しない選び方を写真付きでくわしくまとめました。買ってから「合わなかった」を防ぎたい方はこちら。
③ 靴下
病室では、素足のまま靴を履いてしまう場面が意外と多いものです。でも、靴下をはいておくと安心です。
素足で靴を履くと、靴ずれなどで小さな傷ができてしまうことがあります。とくに高齢の方や糖尿病のある方は、足の小さな傷が治りにくかったり、そこから感染を起こしてしまうこともあります。靴下は、足を守るクッションの役割も果たしてくれます。
しめつけの強くない、はき心地のよいものを数足用意しておくとよいでしょう。色が選べるものだと、その日の気分や曜日で使い分けられて、ちょっとした楽しみにもなります。
④ 時計・カレンダー
病室には、時計もカレンダーも置かれていないことがほとんどです。
リハビリ中は「今日は何日ですか?」「今は何時ごろでしょう?」とお聞きすることがよくあります(認知機能・見当識の確認のためです)。また、「何日にご家族が面会に来る」「何時にリハビリがある」という見通しが立てられると、患者さんの安心感にもつながります。壁掛けよりも、ベッドのそばに置ける卓上タイプの時計・カレンダーのほうが使いやすいです。
ご紹介するのは、時刻が自動で合う電波時計で、数字が大きく見やすいデジタルタイプです。温度・湿度も表示されるので、暑さや乾燥の目安にもなり、体調管理にも役立ちます。コンパクトで、ベッドのそばにそっと置けます。
⑤ マスク
リハビリ中は、スタッフと近い距離で長い時間向き合うため、マスクの着用をお願いすることがあります(病院の方針にもよります)。コンビニでも買えますが、入院は長くなることも多いので、ある程度まとめて用意しておくと安心です。1枚ずつの個包装タイプなら、清潔に持ち運べて、面会に来たご家族が使う分を分けるのにも便利です。
この記事の持ち物を、印刷してそのまま使えるチェックリストにしました。各品目に「PTのひとこと」つき。病院からの案内で追加になったものを書き込む欄もあります。
▶ チェックリストをダウンロードする(PDF・無料)
入院リハビリのよくある質問
Q. 入院リハビリは毎日ある?1日何時間くらい?
Q. 入院リハビリはいつまで続くの?
Q. 靴はどんなものがいい?サンダルはダメ?
Q. T字杖は入院前に買っておいた方がいい?
ただし、4点杖や歩行器が必要になりそうな場合は、すぐに買うのはストップ!これらは介護保険でレンタルできることが多く、あわてて自費で買うと損をしてしまうことがあります。まずはケアマネジャーや退院支援看護師に相談しましょう。杖の選び方は こちらの記事 でくわしく解説しています。
Q. 整形外科の入院リハビリは何日くらい?
Q. 入院リハビリに介護保険は使える?
まとめ
📝 この記事のポイント
- ✅ 入院リハビリは「状態確認 → 座る → 立つ → 歩く」と段階的に進む。ゴールは一人ひとり違う
- ✅ 期間の目安は整形外科で1か月前後、地域包括ケア病棟は最長2か月。早く帰れることも、延びることもある
- ✅ 服装はゆったり伸び縮みするもの。きつい服やサンダルはリハビリの妨げになりやすい
- ✅ 準備して助かるもの … 靴(かかと必須)・T字杖・靴下・時計/カレンダー・マスク
- ✅ 靴とT字杖は早めの準備が、スムーズな退院のカギ
入院は、ご本人だけでなくご家族にとっても不安なものです。少しの準備で、リハビリがスムーズに進み、退院までの道のりが整いやすくなります。この記事が、その手助けになればうれしいです。
種類ごとの違いや、失敗しない選び方を写真付きでくわしくまとめました。買ってから「合わなかった」を防ぎたい方はこちら。



コメント