杖の正しい使い方|持つ手・歩き方・階段の順番を現役PTがわかりやすく解説

杖の正しい使い方 アイキャッチ画像(壁に立てかけた杖を見上げる猫とリスのイラスト) 介護
ケレン(現役理学療法士)
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病院で毎日、高齢の患者さんとご家族の「退院後の生活」に向き合っています。
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📅 2026年8月公開

杖を買った方、親に杖を渡した方から、よくこう聞かれます。「これで合っていますか?」——実は、杖は買ってからが本番です。持つ手、歩く順番、階段、高さ。どれもコツがあって、病院ではリハビリの時間に毎日お伝えしています。

この記事では、現役の理学療法士が、その内容をそのまままとめました。読み終わる頃には、「なぜその順番なのか」という理由ごと覚えられるはずです。

杖はどっちの手に持つ?|痛い方の「反対側」

いちばん多い質問です。答えは、痛い方の反対側の手で持ちます。右膝が痛いなら、左手です。

理由は、歩く時の体重の分担にあります。人は歩く時、左右の足に交互に体重を乗せます。杖を反対側の手に持つと、痛い足に体重が乗る瞬間に、杖が同時に地面について、体重を分け合ってくれるのです。痛い側の手に持つと、この分担ができず、せっかくの杖が働きません。

「利き手で持ちたい」という方も多いのですが、まずは反対側から試してみてください。

杖を持つ手の図解。痛い足と同じ側に持つと×、痛い方の反対側の手に持つと○。杖と痛い足で体重を分け合える

高さの合わせ方|肘が軽く曲がるくらい

買ったままの高さで使っている方が、実はかなりいらっしゃいます。合わせ方は簡単です。

  • 靴を履いた状態で、まっすぐ立つ
  • 杖の先を、つま先から前へ15cm・外へ15cmほど離れた位置につく
  • 腕を自然に垂らして、手首の高さにグリップが来るように調整する
  • 握った時に、肘が軽く曲がる(目安は20〜30度)くらいがちょうどよい高さです

高すぎると肩が上がって力が入りにくく、低すぎると前かがみになって腰に負担がかかります。屋内用の靴と屋外用の靴で高さが変わることもあるので、普段使う場面の靴で合わせてください。

歩き方の順番|「1・2・3」から始める

基本は3動作歩行です。

杖 → 痛い足 → 良い足
「1・2・3」と声に出しながら、このリズムで歩きます。杖と痛い足が先、良い足が最後です。

慣れてきたら、杖と痛い足を同時に出す2動作歩行に移ります。テンポが上がって、自然な歩きに近づきます。

もうひとつ、あまり知られていないコツが歩幅です。最初は、後ろの足を前の足に揃えるように歩きます(揃え型歩行)。安定してきたら、前の足を追い越すように歩きます(前型歩行)。いきなり大股で歩こうとせず、揃える→追い越す、の順で段階を踏むと安全です。

階段の上り下り|順番には理由があります

階段は、順番を覚えるより理由で覚えるのがおすすめです。理由が分かれば、迷った時に自分で導き出せます。

原則はこうです。上にある足が、体を支えて踏ん張る。だから、良い足が常に上の段にあるようにします。

  • 上り:良い足から上る。踏ん張れる足で、体を引き上げるためです(杖と痛い足は後から)
  • 下り:杖と痛い足から下りる。良い足を上の段に残して、ブレーキをかけながら下りるためです

不安なときは、「一歩目だけ」試してみてください
手すりにつかまったまま、一歩目を出して、上ろう(下りよう)としてみます。順番が間違っていれば、いつもと明らかに違う感じ、または痛い感じがするはずです。実際に上りきらず、「やろうとしてみる」ところで留めるのがポイントです。体の感覚が、正しい順番を教えてくれます。

階段で迷ったら一歩目テスト。手すりを持ち、一歩だけ出して上ろうとしてみる。違和感があれば止まってOK

そして大事なことをひとつ。階段では、手すりがあるなら手すりを最優先にしてください。杖は段に引っ掛かる原因にもなります。杖は手すりのない側の手に持ち替えるか、状況によっては使わない判断もあります。

現場でよく見る「もったいない使い方」

リハビリの現場でよく見かける、直すだけで歩きが変わるポイントを3つ挙げます。

  • 杖をつく位置が遠すぎる・近すぎる——遠くにつくと体が引っぱられ、近すぎると支えになりません。足の斜め前、体の近くに、なるべく垂直につきます
  • 杖を出すタイミングがばらばら——リズムが崩れると、杖と体重がかみ合いません。「1・2・3」と声に出すと整います
  • 高さが合っていない——買ったまま使っていませんか?上の合わせ方で一度確認してみてください

月に1回、先端のゴムを見てください

意外と見落とされがちなのが、杖の先端のゴムです。すり減りの確認は簡単で、底の溝が見えるかを見ます。円などの模様が刻んであるはずで、それがすり減って消えかけていたら交換のサインです。周りがボロボロにほつれていないかも見てください。

私は以前、患者さんの杖をお借りして体重をかけたら、つるっと滑ってしまったことがあります。「いざという時に、これでは支えられないと思います」とお伝えして、その場で交換をおすすめしました。ゴムは数百円の消耗品です。杖本体を買い替えなくても、ここだけ替えれば効きが戻ります。

交換用のゴムを選ぶ時に、ひとつ知っておいてほしいことがあります。先端のゴムには杖の太さごとにサイズがあり、合わないものは使えません。買う前に、お使いの杖の先端の直径(「内径◯mm」という表記)を必ず確認してください。

そのうえで、せっかく交換するなら、という選択肢をひとつ。先端を1点から5点に切り替えるタイプのゴムチップがあります。接地面が広がって安定するうえ、手を離しても杖が自立するので、倒れた杖を拾うためにかがむ回数が減ります。

楽になる理由:接地面が広がって安定する。手を離しても杖が自立するので、かがんで拾う動作が減る
向かない・注意:杖の直径に合うサイズ確認が必須です(下に内径16mm用と19mm用を載せています)。砂利道など凹凸のある地面では、かえって接地が不安定になる場面もあります

価格は990円前後です(2026年8月時点・送料が別にかかる店舗もあります)。こちらはスリム杖(内径16mm)用です。

一般的な太さの杖(内径19mm)用は、こちらの6点タイプです。価格は1,533円前後です(2026年8月時点・離島など一部地域は追加送料がかかる場合があります)。

杖を使っても不安定なときは

最後に、大切な見極めの話です。

T字杖に体重を預けて歩いているのは、危険信号です。T字杖は、あくまでバランスを取るための道具で、体重を支える道具ではありません。ぐっと寄りかかるようになってきたら、道具が体に合わなくなってきたサインです。

その場合は、少し頼れる多点杖や、シルバーカー・歩行器への切り替えを検討してよい時期です。理学療法士に相談すれば、バランスや転倒のリスクを評価したうえで、その方に合った歩行補助具を提案してもらえます。通院先やお住まいの地域包括支援センターで聞いてみてください。

杖の種類ごとの特徴は、こちらにまとめています。


📎 高齢者の杖の種類と使い分け|T字杖・折りたたみ・多点杖をPTが解説

まとめ|理由ごと覚えれば、迷わない

  • 杖は痛い足と反対側の手。体重を分け合うため
  • 高さは肘が軽く曲がるくらい。買ったままにしない
  • 歩く順番は「杖→痛い足→良い足」の1・2・3から
  • 階段は「良い足が常に上」。上りは良い足から、下りは杖と痛い足から
  • 手すりがあるなら手すり優先
  • 先端のゴムは月に1回、溝を確認
  • T字杖に体重を預け始めたら、道具の見直しを

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