「退院後、家で介助する人がいないんです。私、仕事を辞めたほうがいいんでしょうか」——退院が近づいた病棟で、ご家族からこんな相談を受けることがあります。

母の退院が決まったけど、日中は誰もいない。私が仕事を辞めるしかないのかな…

その迷い、病棟では珍しくありません。ただ、実際に辞める方はほとんど見ないんです。まず、病棟で見ている現実からお話しします
この記事は、親の介護で「仕事を辞めようか」と迷っている方に向けて、病院勤務の理学療法士が病棟で見てきた家族の現実と、仕事を休むなら来たほうがいい日、そして頼れる先をまとめたものです。制度の細かい説明は、あえて省いています。「同じように迷っている人がいるんだ」と感じてもらえたら、それだけで書いた意味があります。
先に結論
①子ども世代が仕事を辞めるケースは、病棟ではほとんど見ない ②すぐに決めなくていい・ひとりで抱えなくていい ③仕事を休むなら入院日・手術日・退院前の話し合い・退院日 ④頼る先は退院支援看護師・相談員・ケアマネと、介護保険のサービス

病棟で見ている「仕事を辞めようか」の現実
まず、意外に思われるかもしれない事実からお伝えします。子ども世代の方が「仕事を辞めます」と実際に決める場面を、私はほとんど見たことがありません。
「辞めようか」という言葉が出ることはあります。ただその多くは、不安を口にする親御さんに話を合わせてあげているように見えます。「私が仕事を辞めてでも見るから」は、本人を安心させるための言葉であって、決断ではないことが多いのです。
一方で、実際に迷われるのは配偶者の方です。パートなど小さな仕事をしていて、介助のためにもう辞めようか——こうした話は耳にします(個人が特定されないよう、細部を変えています)。
もうひとつ。退院先が施設になる場合、仕事を辞めるという話はまず出ません。「家に帰る=家族が介助する」という前提が、迷いを生んでいるとも言えます。
「辞める」は、選択肢のひとつにすぎない
だからといって「辞めてはいけない」と言いたいわけではありません。家庭ごとに事情は違います。ただ病棟で見る限り、辞める以外の道を先に探しているご家族がほとんどです。この記事でも、その道を順に書いていきます。
私がご家族に伝えている、2つのこと
理学療法士の私は、仕事や介護の方針を決める立場ではありません。それでも、迷っているご家族に伝えていることが2つあります。
- 「すぐに決めるのは大変ですよね」——退院までに人生の決断をする必要はありません。まず退院を迎えて、そこから考えても遅くないことが多いです
- 「自分たちだけで解決するのは難しいですよね。まわりを頼れるといいんですけどね」——家族だけで抱えないための仕組みが、病院にも地域にもあります
どちらも、答えを出す言葉ではありません。それでも、「まだ決めなくていい」「ひとりで抱えなくていい」と聞くだけで、少し肩の力が抜ける方が多いように感じます。
仕事を休むなら、この日|家族が来たほうがいい場面
「いつ休めばいいか分からないから、とりあえず全部休む」は、いちばん消耗します。病棟の実感として、家族が来たほうがいい日はある程度決まっています。
| 場面 | 来たほうがいい理由 |
|---|---|
| 入院日・手術日 | 病状や治療の説明があり、同意や手続きが必要なことが多い |
| 退院前の話し合い | 退院支援看護師や相談員から依頼が来る。退院後の生活を決める場なので、できれば同席を |
| 家族への指導 | 介助のしかたや注意点をリハビリスタッフが説明。話し合いの日にまとめて行うことが多い |
| 退院日 | 荷物運びと車の送迎。安静度の決まりで、本人が荷物を多く持てないこともある |
逆に言えば、それ以外の日は、毎日来なくても大丈夫です。「毎日行かないと」と思い詰めなくていい、というのも病棟からの正直な実感です。
リハビリ側がしている配慮
働いているご家族のために、リハビリの側でもできることをしています。
- 家族にも分かるプリントを、患者さん本人に渡しておく——面会のときに読んでもらえれば、直接会えなくても伝わります
- 面会の時間を把握して、リハビリを被らせない——せっかく来た家族と会えない、ということがないように
- 家族への指導は、平日だけでなく土曜日にも——私の職場ではリハビリは日曜が休みですが、土曜に合わせることはあります。「平日は無理」とあきらめる前に、相談してみてください
面会のときに少しお話しすることもあります。来られる曜日と時間を、看護師やリハビリスタッフに伝えておくのが、両立のいちばん小さなコツかもしれません。
入院はどのくらい続く?
目安として、手術や治療をする急性期の病院は数週間、その後のリハビリ病院(回復期)はそれより長くなることが多いです。ただし、結局はその人の手術や環境しだいです。大きな病院では、早めに退院や転院の話が出ることも多いと聞きます。退院の時期や退院後の生活は、リハビリの担当者に相談できることもあるので、面会のときに聞いてみてください。
「まわりを頼る」の中身
「頼れるといいですね」と言われても、誰に何を頼めばいいのか分からない——それが本音だと思います。病棟からつながる先を、順に並べます。

- 退院支援看護師・相談員(ソーシャルワーカー)——退院後の生活の相談窓口です。仕事の事情も遠慮なく伝えてください。「日中は誰もいない」は、伝えないと計画に反映されません
- ケアマネジャー——介護保険を使う場合に、退院後の計画を立てる人です。申請から認定までは介護保険の申請から認定までの流れにまとめています
- 介護保険のサービス——日中を任せられるデイサービス・デイケア、数日単位で預かってもらえるショートステイ、家に来てもらうヘルパー。「働きながら」の土台になるのはここです。申請をためらっている方は介護保険のデメリットは本当?もどうぞ
- 食事と道具——毎日の食事は配食サービス、歩行器などは介護保険のレンタルで、家族の負担を減らせます
入院中のお金のことが気になる方は、親の入院費用はいくら?誰に聞くか・高額療養費もあわせてどうぞ。
なお、会社の制度として介護休業・介護休暇という仕組みもあります。制度の使い方は介護休業93日の使い方|3回に分ける設計図に、仕事を続けながら支える選択肢の全体像は親の介護と仕事は両立できる?仕事を続けながら支える制度と選択肢にまとめています。条件や日数は職場や状況で変わるので、この記事では詳しく書きません。正確な内容は厚生労働省の「仕事と介護の両立」のページと、勤め先の担当窓口で確認してください。
⚠ この記事で書かないこと
辞めるべきかどうかの判断、介護休業の細かい条件、費用の具体的な金額は書いていません。判断は家庭ごとに違うので、相談員やケアマネジャーと一緒に考えてください。
よくある質問
Q. 退院までに、仕事をどうするか決めないといけませんか?
決めなくて大丈夫なことがほとんどです。退院後の生活は、ケアマネジャーや相談員と一緒に、あとから調整できます。まずは「日中は誰もいない」という事実を伝えるところからです。
Q. 一人っ子で、頼れる人がいません。
家族が少ないほど、まわりの仕組みを使う意味があります。相談員に「頼れる家族がいない」と伝えると、その前提で計画を立ててくれます。
Q. 施設を選ぶのは、冷たいでしょうか?
病棟で見る限り、施設を選んだご家族を冷たいと感じたことはありません。迷いの正体は親を施設に入れる罪悪感とタイミングに書いています。
まとめ
「仕事を辞めようか」と迷うのは、それだけ真剣に親御さんのことを考えている証拠です。ただ病棟で見る限り、辞める前にできることはたくさんあります。すぐに決めない、ひとりで抱えない、来たほうがいい日だけ休む、まわりを頼る。この4つを、退院までの合言葉にしてもらえたらうれしいです。
同じように迷っている方は、あなただけではありません。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。それではまた、お大事に!


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