「立ち上がるときに膝がズキッと痛む」「階段を下りるのがこわい」——膝が痛むと、このまま悪くなったらどうしよう、歩けなくなったら…と不安になりますよね。理学療法士として高齢の患者さんやそのご家族と接していると、膝の悩みを抱えた方は本当に多いと感じます。
この記事では、「自分の膝の痛みは何だろう」「どうすればいいんだろう」という不安に少しでも寄り添えるよう、痛む場所ごとの傾向と、ご自宅でできること、そして「こんなときは病院へ」の目安までをお伝えします。あくまで一般的な目安としてお読みください。
膝の痛みは「どこが痛むか」を意識すると手がかりになります
ひとくちに膝の痛みといっても、痛む場所はさまざまです。臨床で患者さんのお話を聞いていると、「どのあたりが痛いか」によって訴えの傾向が違うと感じます。ご自身の状態を理解する手がかりとして、ゆるやかに整理してみましょう。
- 膝の内側が痛むという方:立ち座りや階段の上り下りで内側がつらい、と話される方が多い印象です。高齢の方では、後でお話しする変形性膝関節症が背景にあることもあります。
- 膝の外側が痛むという方:たくさん歩いた後や運動の後に外側が気になる、という方によく出会います。脚の形(O脚・X脚など)が関係していることもあるようです。
- 膝の前側(お皿のまわり)が痛むという方:立ち座りや階段で、お皿のあたりに負担を感じる、という声をよく聞きます。
もちろん、これはあくまで傾向です。同じ場所が痛くても原因は人それぞれなので、「自分はどのタイプに近いかな」という参考程度に見ていただければと思います。
高齢の方に多い「変形性膝関節症」かもしれません
高齢の患者さんの膝の痛みでよくお見かけするのが、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)と診断される方です。膝の骨と骨の間でクッションの役割をする軟骨が、長年の使用で少しずつすり減り、炎症や痛みが出てくると考えられています。
こんな訴えをされる方が多いです
- 朝起きたときや、座っていて立ち上がる「動き出し」に痛むという方
- 歩いているとだんだん痛くなって、長くは歩けないという方
- 膝が伸びきらない・正座がつらい、と感じている方
- 膝が腫れて、水がたまったように感じるという方
痛みは内側から始まると話される方が比較的多い印象です。日本人にはO脚気味の方が多く、内側に体重がかかりやすいことが関係しているのかもしれません。思い当たることがあれば、一度整形外科で相談してみると安心です。
「痛いから動かない」が、かえってつらくなることも
痛むとどうしても動くのが億劫になりますが、歩く量が減ると、膝を支える太ももの筋肉(大腿四頭筋)が弱くなりがちです。すると膝が不安定になって、さらに痛みやすくなる——という悪循環につながることがあります。「無理は禁物、でもまったく動かさないのも考えもの」というのが、現場で感じるところです。
内側・外側、それぞれの痛みについて
内側が痛むという方は、先ほどの変形性膝関節症のほか、内側のじん帯や半月板(はんげつばん)への負担が関係していることもあるようです。正座や立ち座りで内側がズキッとするという方は、体重のかかり方や膝まわりの筋力を見直すきっかけにしてみてください。
外側が痛むという方は、ウォーキングや運動の量が急に増えた後に訴えられることが多い印象です。「最近がんばって歩き始めた」という方は、いったん量を控えめにして様子を見ると、楽になることもあります。
ご自宅でできること
痛みとうまく付き合うために、ご自宅で試していただけることをいくつかご紹介します。どれも「これをやれば必ず治る」というものではありませんが、日々のケアの参考になればうれしいです。
- 温める・冷やすの使い分け:急に腫れて熱を持っているときは冷やし、慢性的なこわばりには温める、というのがひとつの目安です。
- 太ももの筋肉をやさしく鍛える:イスに座って片膝をゆっくり伸ばし、5秒キープ。膝に負担をかけずに大腿四頭筋を鍛えられる、取り入れやすい運動です。痛みが出ない範囲で行ってください。
- 体重と相談する:体重が増えると歩くときの膝の負担も増えるといわれます。無理のない範囲で、と考えていただければ十分です。
- 靴を見直す:クッション性のある靴を選び、すり減ったソールは早めに替えると、膝への負担がやわらぐことがあります。
こんなときは、無理せず病院へ
セルフケアで様子を見ても、次のようなときは、自己判断せず整形外科を受診してください。早めに相談しておくと、その後の生活のしやすさにつながります。
- 2週間以上、痛みが続いている・だんだん強くなっているとき
- 膝が大きく腫れている、熱を持っているとき
- 膝に力が入らず、ガクッと崩れる感じがあるとき
- 痛くて歩けない、夜も痛むとき
「これくらいで病院に行っていいのかな」とためらう方も多いのですが、不安なまま我慢するより、一度みてもらったほうが安心できることがほとんどです。
膝の痛みは「転倒」とも深く関わります
膝が痛むと歩き方がぎこちなくなり、筋力も落ちて、転びやすくなることがあります。高齢の方の転倒は、骨折から寝たきりにつながることもあり、ご本人だけでなくご家族にとっても気がかりですよね。膝をかばう歩き方が気になる方は、高齢者が転倒を繰り返す原因と対策もあわせてご覧ください。歩くことに不安が出てきたら、T字杖の選び方を参考に、早めに杖を取り入れるのも、安心して歩くための一つの方法です。
まとめ
膝の痛みは「内側・外側・前側」で訴えの傾向が変わり、高齢の方では内側から始まる変形性膝関節症がよくみられます。痛いとつい動かさなくなりがちですが、それがかえってつらさにつながることもあります。無理のない範囲で太ももの筋肉を保ちつつ、「こんなときは病院へ」の目安に当てはまったら、ためらわず専門家に相談してくださいね。膝を大切にすることは、転倒を防ぎ、自分の足で歩き続けるための土台になります。



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