ポータブルトイレは介護保険で買える?使う前に知りたい置き場所と練習を現役PTが解説

ベッドに腰かけた高齢の猫が、リスの理学療法士に手を添えられて横の肘掛け椅子へ移る練習をし、家族の猫が見守る水彩イラスト 介護

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ケレン(現役理学療法士)
この記事を書いた人:ケレン(現役理学療法士)
病院で、高齢の患者さんとご家族の「退院後の生活」に向き合ってきた経験から書いています。
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📅 2026年9月公開

家族
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退院の準備の話で「ポータブルトイレというものもあります」と聞きました。介護保険で買えるんですか? 家に置いたほうがいいんでしょうか。

ケレン
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要支援・要介護の認定があれば、介護保険で買えます。ただ正直にお伝えすると、病棟で私から勧めることは、あまりありません。使うと決めたときは、置く場所と入院中の練習が大切になります。

退院前のご家族から、ポータブルトイレについて聞かれることがあります。「使えるかどうか」というより、「そういう物もあるんですね」と確かめたい、という方が多い印象です。

この記事では、介護保険での買い方と、病院の理学療法士として感じていること、使うと決めたときの置き場所と練習をまとめます。

この記事の答え(先にまとめ)

  • ポータブルトイレは、介護保険で「買う」福祉用具です(レンタルではありません)。要支援・要介護の認定がある方が対象で、自己負担は1〜3割、1年度に10万円までです
  • 保険を使うなら、指定を受けたお店で、相談して買うこと。ネット通販やホームセンターで買った物は対象外です
  • 使うのは、夜、トイレまで歩くのが難しいときや、歩きがまだ安定しないとき。管理が大変なので、病棟で勧めることは多くありません
  • 置くなら、頭の近くを避けて、片側に麻痺があれば麻痺のない側に。足元寄りや少し離れた所に置くと、抵抗が少しやわらぎます
  • 夜は、おむつで対応する方も少なくありません

ポータブルトイレを使うのは、どんなとき?|病棟で勧めることは多くありません

ポータブルトイレを考えるのは、夜、トイレまで歩くのが難しいときや、歩きがまだ安定しないときです。

ただ、においや後始末などの管理が大変なので、私が病棟で勧めることはあまりありません。実際、においや後始末のことを考えて、はじめから断る方が多い印象です。

🌙 ポータブルトイレを考えるとき

  • 夜、トイレまで歩くのが難しい
  • 歩きが、まだ安定しない

🚪 先に考えたいこと

  • もう少しでトイレまで歩けそうなら、トイレに行ける家を整える
  • 夜のトイレまでの明かりや、つかまる所を整える

もう少しでトイレまで行けそうな方なら、ポータブルトイレは使わずに、トイレまで安全に行ける家を整えるほうを考えます。使い始めた方でも、トイレまで動けるようになって、使わなくなる方もいるようです。

トイレに自分で行くことは、起き上がる・立つ・歩くがそろった、毎日の大事な活動でもあります。手すりや便座の高さの整え方はトイレの転倒対策、夜のトイレまでの対策は夜間転倒を防ぐ5つの対策にまとめています。

介護保険で買える?|買う前に知っておきたい5つ

ポータブルトイレは、介護保険では「特定福祉用具購入」の「腰掛便座」に入ります。衛生面の理由から、借りるのではなく買う用具です(健康長寿ネット)。

① 自己負担は1〜3割。上限は1年度に10万円

毎年4月から翌年3月までの1年度で、10万円までの購入費のうち、所得に応じて7〜9割が介護保険から戻ってきます。

💡 手すりの取り付けや段差をなくす工事は「住宅改修」という別の制度で、こちらは20万円まで(原則1人1回)です。ポータブルトイレなどを買う「1年度に10万円」とは、別の枠です。

② 指定を受けたお店で、相談して買う

保険が使えるのは、都道府県などの指定を受けた販売店で、福祉用具専門相談員に相談して買った場合です。ネット通販やホームセンターで買った物は、あとから保険の対象にできません。まずはケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター)に相談してください。

③ 入院中に、退院後の家用として買うこともできる

退院後の生活に備えて、入院中に買うこともできます。ただし、払い戻しの申し込みは「退院して、家で使い始めてから」としている市区町村もあります。

④ 介護認定の申請中なら、買う前に相談を

認定の結果を待っている間に買っても、申請日以降に買った物(領収書の日付)なら、認定が出たあとで払い戻しを申し込める場合があります。ただし結果が「非該当」だと、全額自己負担になります。買う前に、ケアマネジャー(まだいなければ地域包括支援センター)に相談してください。申請の時期や流れは介護保険の申請から認定までの流れで説明しています。

⑤ 同じ種類の買い直しは、限られた場合だけ

同じ種類の用具を保険で買い直せるのは、壊れたときや、体の状態が変わったときなどに限られます。細かい扱いは市区町村で違うので、買う前に確認してください。

⚠ 消臭液や処理袋は自費です

保険の対象はトイレ本体です。消臭液や処理袋などの消耗品、送料や設置の費用は、自分で用意することになります。

置くならどこ?|ベッドとの位置と向き

使うと決めたときに、いちばん気をつけたいのが置き場所です。置くと決めた場合に、私が大切だと思うのは次の点です。

  • 頭の近くに置かない……枕元にトイレがあることに、抵抗を感じる方は多いです
  • 片側に麻痺がある場合は、麻痺のない側に置く……力の入る側で立ち上がって、向きを変えられるようにします
  • 必要なら、ベッドの向きごと変える……部屋の形によっては、ベッドの向きを変えないと、麻痺のない側に置けないことがあります
  • 足元寄りや、少しだけ離れた所に……ベッドのすぐ横よりも、抵抗が少しやわらぐと感じます

置く場所は、部屋の広さや家具の配置で変わります。部屋の写真を見ながら、ケアマネジャーや福祉用具の専門相談員と相談すると決めやすくなります。どこを撮ればいいかは退院前に家を整えるで紹介しています。

選ぶときに確かめたいこと

ポータブルトイレには、プラスチック製のもの、脚が金属のもの、使わないときは家具のように見える家具調などがあります。選ぶときは、立ち上がるときに足を手前に引ける空間があるかを確かめてください(健康長寿ネット)。肘掛けの有無や、体重をかけたときの安定感は、実物を見ながら専門相談員と一緒に確かめると安心です。

入院中にする練習|横の椅子へ移る・ズボンの上げ下ろし

ポータブルトイレを使うには、トイレまで歩く代わりに、ベッドから横へ移ることと、立ったままズボンを上げ下ろしすることが必要です。病棟では、次のような練習をします。

  1. ベッドの横に椅子をつけて、乗り移る
  2. 実際にズボンを上げ下ろしする(ゴムバンドを腰に巻いて、上げ下ろしできるかを確かめることもあります)
  3. 両手を使わずに立てるかを確かめる
  4. 片手で手すりを持ち、もう片方の手でズボンを持つ、という形でできるかを確かめる

家で使うか迷っているときは、担当のリハビリスタッフに「ポータブルトイレを使う動きができるか、見てもらえますか」と聞いてみるのも一つです。

「部屋にトイレは嫌」は、自然な気持ちです

ベッドのそばにトイレを置くことに、抵抗を感じる方は多いです。病棟でも、こちらからこの話をすることはあまりありません。

ほかの方法として、夜はおむつで対応する方も少なくありません。どの方法がよいかは、ご本人の気持ちと、介護するご家族の負担をあわせて、ケアマネジャーと相談して決めてください。

使うと決めたら|後始末とにおいの道具(紹介)

ここで紹介するのは、ポータブルトイレを使うと決めたご家族向けの消耗品です。私から勧めることはほとんどなく、ご家庭で使っている場面を見たこともありません。メーカーの説明をもとに「こういう物があります」とお伝えするだけなので、選ぶときは福祉用具の専門相談員にも相談してください。

消耗品はもともと介護保険の対象外なので、通販で買っても、保険の上での違いはありません。

消臭液|バケツに入れておく液体

バケツにあらかじめ入れておく、液体の消臭剤です。400mlで500円前後です(送料が別にかかります・2026年9月時点)。

消臭シート|バケツに入れるシート状のもの

シート状の消臭剤で、メーカーは「バケツに敷いて使う」と説明しています。30枚入りで900円前後です(送料が別にかかります・2026年9月時点)。

処理袋|バケツにかぶせる袋

バケツにかぶせて使う、吸水シート付きの袋です。メーカーは「バケツを洗わずに片付けられる」ことを特長にしています。30枚入りで3,900円前後です(2026年9月時点)。捨て方は、お住まいの地域のルールに従ってください。

よくある質問

Q. レンタルはできますか?

A.ポータブルトイレは、衛生面の理由から、介護保険では借りるのではなく買う用具です。杖や歩行器などの「借りるか買うか」は杖や歩行器はレンタルと購入どっち?で説明しています。

Q. ニトリやホームセンターで買ってもいいですか?

A.買うこと自体はできますが、介護保険の対象にはなりません。介護認定を受けている、または申請中なら、先にケアマネジャーに相談するのがおすすめです。

Q. 夜だけ使うのはありですか?

A.夜、トイレまで歩くのが難しい場合の選択肢の一つです。昼はトイレまで歩き、夜だけ使う、という形もあります。まずは夜のトイレまでの道のりを整えることから考えてみてください(夜間転倒を防ぐ5つの対策)。

まとめ|まずは「トイレに行ける家」。使うなら置き方と練習を

  • ポータブルトイレは、介護保険で「買う」用具。認定がある方が対象で、1〜3割負担、1年度に10万円まで。指定のお店で
  • 病棟で勧めることは多くありません。使うのは、夜にトイレまで歩くのが難しいときや、歩きが安定しないとき
  • もう少しでトイレまで行けそうなら、トイレに行ける家を整えるほうを先に
  • 置くなら、頭から離して、麻痺があれば麻痺のない側に。足元寄りだと抵抗が少しやわらぐ
  • 入院中に「横へ移る」「ズボンの上げ下ろし」の練習を
  • 夜はおむつで対応する方も。ご本人の気持ちと家族の負担で決めてください

寝室の安全対策は寝室の転倒対策、入院中にご家族ができることは親の入院リハビリ、家族は何をすれば?にまとめています。

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