退院前に家を整える|PTが家族に「写真で送ってほしい場所」と、レンタルか改修かの決め方

退院前に家を整える|PTが写真で送ってほしい7か所と、レンタルか改修か 介護

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ケレン(現役理学療法士)
この記事を書いた人:ケレン(現役理学療法士)
病院で、高齢の患者さんとご家族の「退院後の生活」に向き合ってきた経験から書いています。
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📅 2026年9月更新|「家屋調査とは?」「退院前カンファレンスとは?」の章を追加

「退院が決まりました。家の準備は、何をすればいいですか?」——退院前の家族指導で、いちばん多い質問です。手すり、段差、トイレ、お風呂。どこから手をつければいいのか分からず、片っ端から直そうとして疲れてしまうご家族を、何度も見てきました。

家族
家族

退院まで2週間。手すりは付けたほうがいい?お風呂は?全部直す時間もお金もないんだけど…

ケレン
ケレン

全部はいりません。順番があります。それに、退院まで2週間だと工事まで進むことはあまりなく、改修は介護保険の申請が要るのでケアマネジャーさんと相談しながらになります。私たちは家を見に行けないことが多いので、まず「写真」を送ってもらえると、そこから提案できるんです

この記事では、病院勤務の理学療法士が、退院前の家族指導で実際に伝えている家を整える順番と、写真で送ってほしい場所、そしてレンタルにするか改修するかの決め方をまとめます。場所ごとの細かいグッズは、それぞれの記事にリンクしています。

先に結論

①順番は寝室→トイレ→玄関→食卓→お風呂。まず「寝室からトイレに行けるか」 ②見に行けないので、写真を撮って送ってほしい場所が7つある ③改修(工事)は介護保険の住宅改修として、ケアマネジャーに相談して進める。退院まで日がないときはまず置き型手すりなどのレンタルで整える ④手作りの手すりは、安全性だけ業者に確認を

退院前に家を整える順番。①寝室②トイレへの動線③玄関・外出④食卓⑤お風呂。見に行けないので写真を送ってもらうことがよくある

退院前に整える順番|朝起きてから夜寝るまで

家族指導で私が最初に聞くのは、「朝起きてから夜寝るまで、親御さんはどこを通りますか?」です。家の中を一日の流れでたどると、整えるべき場所と順番が自然に決まります。

そして、最優先はいつも同じです。寝室からトイレまでの動線。食事ももちろん大切ですが、「まずトイレに行けないと困る」という方がいちばん多いのです。夜中に一人でトイレに行けるかどうかで、退院後の生活の形が決まると言ってもいいくらいです。

  1. 寝室——ベッドの高さ、起き上がる側に立ち上がる空間があるか
  2. トイレへの動線——廊下の距離、段差、夜の明かり、途中でつかまれる所
  3. 玄関・外出——上がり口の段差、靴を履く場所、外の道。通院や散歩をするなら、ここまで
  4. 食卓——椅子に肘掛けがあるか、座面の高さは合っているか
  5. お風呂——浴槽のまたぎ、洗い場の滑り、扉の開け閉め

順番は目安です。手術した場所や、家の間取りで変わります。ただ、「上から順に整えて、時間切れになったら下は退院後に回す」と考えると、退院までにやることがはっきりします。

家屋調査とは?|誰が来て、家族は何をすればいいか

退院前に、病院のスタッフがご自宅を見に行くことがあります。「家屋調査」「家屋評価」「退院前訪問」など呼び方はいろいろですが、中身は同じで、ご本人の動き方に合わせて、玄関・トイレ・お風呂・寝室・段差・手すりの位置を確認する日です。必ず行うものではなく、病院や状態によって、行く場合と写真で代わりにする場合があります。

誰が来るのか

理学療法士が中心で、病院によっては作業療法士と一緒に来ます。退院の調整をする相談員(ソーシャルワーカー・社会福祉士)が同行することもあり、タイミングを合わせて福祉用具の業者さんが来ることもあります。ふつうは数人で伺います。私の経験では、業者さんも重なって5人が同時に集まったことが一度ありましたが、これはめずらしいケースです。

家族がすること

  • その時間、誰かが家にいる:これがいちばん大事です。入院されている方の子ども世代が対応することが多いですが、その時間だけ配偶者の方がいてくださる形もよくあります
  • 事前の準備はほとんど要りません:間取りや写真はその場でスタッフが見ます。片づけも不要です
  • 見られたくない物、写真に映したくない物はどかしておく:家の中を写真に撮ることがあります。撮った写真は退院の準備のために病院が使うもので、個人情報として扱われます。それでも映してほしくない物があれば、事前に移しておいてください
  • その日に必要な休みは半日が目安:介護休暇を時間単位で使えることが多いです。休みの取り方は介護休暇と介護休業の違いにまとめています

どうしても行けないとき

家屋調査は必須ではないので、無理に都合をつけなくても大丈夫です。その代わり、次の章の「写真で送ってほしい7か所」に協力してもらえると、とても助かります。家の情報が何もないと、こちらも不安が多いまま退院の準備を進めることになります。ご本人からくわしく聞けるくらい認知機能がはっきりしていれば大きな心配はありませんが、写真そのものがあると、チームで共有できて、新しい発見や安心材料になります。

退院前カンファレンスとは?|家族が聞かれること・決めておくこと

退院前に、医師・看護師・リハビリ担当・相談員(ソーシャルワーカー)・ケアマネジャーとご家族が集まって、退院後の生活を話し合う時間です。1時間前後で、平日の昼に組まれることがほとんどです。家屋調査と並んで、ご家族に平日に来ていただく代表的な日のひとつです。

家族からよく出る質問と、私の答え方

カンファレンスや退院指導の場で、ご家族からよく聞かれるのは次の2つです。

  • 「家に帰ってからできる運動はありますか?」:あります。私は紙のメニューをお渡しして、入院中のリハビリの時間に、動作を確認しながら正しくできるように練習してもらっています。退院後に自己流にならないよう、メニューは入院中に体で覚えておくのがいちばんです
  • 「この調子でどんどん良くなりますか?」:正直に言うと、言い切れないことが多いです。「今できるようになったこと」と「目標にどれくらい近づいたか」でお話しするようにしています。この答え方は親の入院リハビリ、家族は何をすれば?にもくわしく書きました

家族が決めておくと話が早いこと

  • 退院日:候補日を2〜3日出しておくと調整しやすいです
  • 送迎の方法:誰の車で、誰が付き添うか。介護タクシーを使うか
  • 歩行補助具:杖・歩行器・車いすを、レンタルするか買うか(杖や歩行器はレンタルと購入どっち?)
  • 荷物:入院中の荷物を、誰がいつ引き取るか

退院後に通うサービス(デイケアやデイサービス)も、このころに話題になることが多いです。違いはデイケアとデイサービスの違いにまとめています。

「家でどこまで手伝ってよいか」は、よく聞かれる一方で、正直にいちばん答えにくい質問です。リハビリの立場では「ここまでは一人でも大丈夫だと思います」とお伝えしますが、必要以上に抑えることも、「これは一人ではだめ」と線を引くことも、簡単ではありません。退院後の様子を見ながら少しずつ確かめていく前提で聞いてもらえると、こちらも話しやすいです。

出席できないとき

ご家族がカンファレンスに出られない場合は、退院のときに簡単に説明をしたり、ご本人にしっかり話しておいたりします。必ずご家族と直接話さなければならないわけではなく、リハビリの立場としては「できれば」というくらいです。ただ、家での介助や運動のことは、ご本人だけに伝えるより、ご家族にも聞いてもらえるほうが伝わりやすいので、来られる日があれば、家屋調査かカンファレンスのどちらかに合わせていただけると助かります。

PTが「写真で送ってほしい」7か所

理学療法士が退院前に自宅を見に行くこと(家屋調査)はあります。ただ、頻繁ではありません。その代わりに、ご家族に家の写真をお願いすることは本当によくあります。見られるなら確実に見ておきたいポイントがあるからです。

写真があれば、「ここに手すりがあるといい」「この段差は踏み台で足りる」と提案できます。そして、実際に合う物を選ぶのは、福祉用具の事業所に頼むことが多いです。まず送ってほしいのは、この7か所です。

場所 撮ってほしいもの PTが見ているところ
① 寝室のベッドまわり ベッド全体と、起き上がる側の床 高さ、柵の有無、立ち上がる空間
② 寝室からトイレまでの廊下 寝室の出口から、トイレの扉まで 距離、段差、夜の明かり、つかまる所
③ トイレの中 扉を開けた正面と、便座の横 便座の高さ、扉の向き、手すりを付ける壁
④ 玄関の上がり口 段差(横にティッシュボックスなどを置いて)、靴を履く場所 段の高さ、腰かける所、つかまる所
⑤ 玄関の外 玄関ドアから道路まで 外の段差、坂、砂利、雨の日の滑り
⑥ 食卓の椅子 椅子を横から 肘掛け、座面の高さ、動きにくさ
⑦ お風呂 浴槽を横から、洗い場全体 またぎの高さ、床の滑り、つかまる所

📷 写真を撮るコツ

段差は、ティッシュボックスやメジャーを伸ばした物を横に置いて撮ってもらえると、高さの目安になります(正確に合わせる必要はありません)。部屋は全体と近くの2枚。それだけで分かることが増えます。可能なら、親御さんの身長が分かる物(椅子や杖)を一緒に写してください。

場所ごとの整え方は、それぞれの記事に詳しくまとめています。

レンタルか改修か|PTの決め方

「手すりは工事で付けるべき?それとも借りるだけでいい?」もよく聞かれます。PTとして「ここは工事で付けたほうがいい」「ここは借りて様子を見ていい」と意見を伝えるときの考え方は、次の3つです。ただし、改修(工事)そのものは介護保険の住宅改修としてケアマネジャーを通して申請するものなので、ご家族やPTだけで決められるわけではありません。

退院まで2週間ほどしかない場合、要介護認定がすでに下りていれば手すりの取り付けが間に合うこともありますが、これから申請する場合は工事まで進まないことが多いです。まずレンタルで整えて、改修は退院後に落ち着いて進める、という順番が現実的です。

  • 設置して邪魔にならない場所なら、改修(工事)を相談してよい——廊下やトイレの壁の手すりは、付けて困ることがほとんどありません
  • 部分的にしか使わないなら、まずレンタル——置き型の手すりやベッド柵は、レンタルで試してから決められます
  • 機能の回復が見込めるなら、レンタル——リハビリで歩けるようになると、要らなくなる物が出てきます。家を改修すると、元に戻せません。回復の途中なら、借りて様子を見るほうが後悔がありません

レンタルの仕組みと費用の目安は杖や歩行器はレンタルと購入どっち?介護保険で借りられるものに、手すりをどこに付けるかは高齢者の手すりはレンタルと購入どっち?必要な3箇所にまとめています。

手作りの手すりは、正直「うーん」となります

家族が張り切って直しすぎて困った、という話は、実はあまり聞きません。ただ、ご主人や息子さんがDIYが好きで、手すりや踏み台を自分で作ったという話は、何度も聞いたことがあります。

気持ちはとてもうれしいのですが、正直に言うと「作ったから大丈夫だよ」と言われても、安全性が分からないので「うーん……」となってしまうのが本音です。手すりは、体重をかけた瞬間に外れたら意味がありません。作ること自体は否定しませんが、固定の強さだけは、福祉用具の事業所に見てもらってください。

借りるもの・買ってよいもの

私の基本は「まずレンタル」です。そのうえで、レンタルできない物・安い物は買ってもよいと思っています。ここで1つ、読者の方に損をしてほしくない注意があります。

⚠ お風呂用品は、介護保険で1〜3割負担になります

シャワーチェアや浴槽内の滑り止めマットは、介護保険の「特定福祉用具購入」の対象です。要介護・要支援の認定がある方は、ケアマネジャーか福祉用具の事業所に頼んで買うと、自己負担が1〜3割になります(年10万円まで)。ネットで自分で買うと全額自費です。たとえば2万円のシャワーベンチなら、1割負担で2千円ほどになる計算です。認定がある方は、先にケアマネに相談してください。ポータブルトイレも同じ「特定福祉用具購入」の対象です(ポータブルトイレは介護保険で買える?)。

レンタルで借りるもの(ケアマネに相談)

置き型の手すり(玄関・トイレ・ベッドの横)、ベッド柵、4点杖は、介護保険のレンタルの対象です。買う前に、ケアマネジャーに「退院までに借りたい」と伝えてください。入院中なら、病院の相談員やリハビリスタッフが手配に関わることも多いです。

買ってよいもの①|お風呂用品(認定がない方・急ぐ方向け)

お風呂用品は、肌に直接ふれて傷みやすいため、基本的にレンタルできません。認定がない方、認定待ちで退院に間に合わせたい方は、ネットで用意する選択肢もあります。浴槽のまたぎが不安な場合の見るポイントと道具の選び方は浴槽のまたぎが不安な高齢の親へ|またぎ方・シャワーチェア・浴槽台を現役PTが解説にまとめています。

アロン化成 安寿 折りたたみシャワーベンチ

病院や施設でも定番のシャワーチェア。肘掛けと背もたれがあり、立ち座りが安定します。使わないときは折りたためます。

価格の目安:2万円前後(FSフィット)(2026年9月時点・ネットで自費購入の場合)

浴槽台(浴槽の中に沈めて腰かける台)。湯船の中で座る位置が高くなり、深く沈み込まずに済むので、立ち上がりが楽になります。またぐときに使う物ではありません。1万5千円前後です(2026年9月時点・高さで変わります・ネットで自費購入の場合)。

アロン化成 安寿 吸着すべり止めマット

浴槽の中に敷く滑り止め。またぐときに足元が滑らないだけで、安心感が大きく変わります。

価格の目安:4千〜5千円前後(2026年9月時点・ネットで自費購入の場合)

買ってよいもの②|安価な滑り止めマット

廊下やトイレの前、ベッドの横に敷く屋内用の滑り止めマットは介護保険の対象外ですが、高い物ではありません。裏が吸着するタイプなら、ずれて逆につまずく心配が少ないです。

屋内用の吸着タイプの滑り止めマット

「おくだけ吸着」のように床に貼り付くタイプを。毛足が長いマットは、つま先が引っかかるので避けてください。

価格の目安:4千〜5千円前後(60×300cmのロングマットの場合)(2026年9月時点・ネットで自費購入の場合)

買ってよいもの③|肘掛けのある椅子

食卓や居間で過ごす椅子は、肘掛けがあって、座面が少し高め(膝の高さくらい、目安40〜45cm)のものが、立ち上がりやすくて安全です。キャスター付きは動いて危ないので避けてください。

肘掛け付きで座面が高めのダイニングチェア

座ったときに膝が90度より少し伸びる高さが目安。肘掛けに手をついて立てると、腰やひざの負担が減ります。

選び方:商品ページの「座面高」の表記を必ず確認(目安40〜45cm)。肘掛けあり・キャスターなしを選んでください

価格の目安:7千〜3万円前後(作りによって幅があります)(2026年9月時点・ネットで自費購入の場合)

外に出るなら|靴と杖

通院や散歩まで考えるなら、家の中を整えたあとは靴と杖です。退院時にリハビリで使っていた靴が「病院の中だけ」の靴だった、ということも多いので、外を歩く靴は別に見直してください。選び方は入院中の親の靴のおすすめ|「靴を用意して」と言われたら見る3つのポイントとT字杖おすすめランキング6選|高齢の親に合う一本にまとめています。

よくある質問

Q. 退院までに全部は間に合いません。最低限は?

寝室からトイレまでの動線と、ベッドまわりです。ここだけ整えれば、あとは退院後にレンタルで足しながら調整できます。

Q. 写真を送ったら、本当に見てもらえますか?

リハビリの担当者か相談員に「家の写真を撮ってきました」と伝えてください。見て提案するのは、私たちにとってもありがたいことです。

Q. 改修の費用はどのくらい?

介護保険の住宅改修の制度があり、条件は市区町村で異なります。具体的な金額はここでは書かず、ケアマネジャーと福祉用具の事業所に相談してください。

この記事で書かないこと

改修費用の具体額や、業者の選び方は書いていません。同じ「手すり1本」でも、壁の中に固定できる下地があるか、段差の高さ、廊下やトイレの広さ、使う人の状態で工事の内容が変わり、介護保険の住宅改修の扱いも市区町村で異なるためです。業者は、ケアマネジャーが地域で普段組んでいる福祉用具の事業所に頼むのが確実なので、相談員・ケアマネと一緒に決めてください。

まとめ

退院前の家の準備は、全部やる必要はありません。寝室からトイレの動線を最優先に、写真を送って提案をもらい、迷ったらレンタルから。この3つで、退院後の暮らしはかなり安全になります。

退院までの流れは入院中のリハビリって何をするの?、お金のことは親の入院費用はいくら?、仕事との両立に迷っている方は親の介護で仕事を辞めるべき?もあわせてどうぞ。気になることがあれば、お気軽にお問い合わせください。それではまた、お大事に!

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