📅 2026年7月公開|9月更新:歩行器の種類と、病院の歩行器・家で使う物の違いを追加
「杖では、なんだか不安になってきた」——親御さんの歩く姿を見て、シルバーカー(手押し車)を調べ始めた方へ。最初に、現場の人間として正直に言わせてください。
シルバーカーは、誰にでも合う道具ではありません。合わない方が使うと、かえって危ないことさえあります。この記事では、理学療法士として「どんな方に合って、どんな方には別の道具が良いのか」の判断軸からお伝えします。売り手ではない立場なので、「やめておいた方がいい場合」も含めて正直に書きます。

この記事の答え(先にまとめ)
- 分かれ目は「体重を預ける必要があるか」。預けるなら歩行器(介護保険でレンタルできる)、預けずに歩けるならシルバーカー(手押し車・自費で購入)
- 病院で練習に使うU字の大きな歩行器は、退院後の家では使いません。家の中は手すりや伝い歩き、必要なら持ち上げて進む軽い歩行器
- シルバーカー(手押し車)の出番は外。散歩・買い物・通院の相棒として選ぶ
結論|分かれ目は「体重を預ける必要があるか」
シルバーカーと歩行器(歩行車)は、見た目は似ていますが、役割がはっきり違います。
| シルバーカー | 歩行器・歩行車 | |
|---|---|---|
| 対象 | 自分の足で歩ける方 | 支えがないと歩行が不安な方 |
| 体重を預ける | ✕ 預けられない | ○ 預けられる設計 |
| 介護保険 | 対象外(自費購入) | レンタル対象(1〜3割負担) |
なぜシルバーカーに体重を預けてはいけないのか。構造上、体重をかけると本体が持ち上がって(浮いて)しまうからです。だから対象になるのは、「体重を預けなくても歩ける方」。ここが一番大きな分かれ目です。
歩行器・歩行車のレンタルの仕組み(費用の目安や借りるまでの流れ)は、杖や歩行器はレンタルと購入どっち?で詳しく解説しています。

⚠️ 歩行が不安定な方は、シルバーカーではありません
「歩くのがどうしても不安定。でも、まず何か試してみたい」という段階の方は、介護保険での歩行器レンタルを先に検討してください。月々1〜3割の負担で借りられて、合わなければ返せます。要介護認定を受けていれば担当のケアマネジャーさんに、まだなら地域包括支援センターに相談を。買う前に、まず借りて試せるのが歩行器の大きな利点です。
歩行器の種類|病院で使う物と、家で使う物は違います
「歩行器」とひと口に言っても、形はいくつかあります。そして、病院で歩く練習に使う物と、退院してから使う物は別物です。
病棟でよく見る「U字で前に車輪が付いた歩行器」
体の前と左右をU字に囲み、前に車輪が付いた大きな歩行器です。病棟では歩く練習によく使いますが、大きいので、退院してからの家ではまず使いません。「病院で使っていたから、同じ物を用意しなきゃ」と考えなくて大丈夫です。
家の中なら「持ち上げて進む歩行器(ピックアップ歩行器)」
タイヤがなく、両手で少し持ち上げて前に置き、そこへ歩いていく形の歩行器です。家の中で歩行器を使う方は、このタイプが多い印象です。軽いものが人気で、持ち上げやすさが選ぶポイントになります。
ただ、家の中に手すりが十分にあれば、歩行器を使わずに手すりや家具を伝って歩く方もいます。家の中の整え方は退院前に家を整えるにまとめています。
外や施設なら「手で握って押す四輪の歩行車」
ハンドルを両手で握り、体重を少し預けながら押して歩くタイプです。施設で過ごす方も、このように手で支えるタイプを使うことが多いです。ひじから先を台に乗せて支える「前腕支持型」もあり、手だけで支えるのが不安な方に使われます。
シルバーカー(手押し車)
自分の足で歩ける方が、散歩や買い物のときに押して歩く道具です。荷物を入れるカゴや、休むための座面が付いた物が多く、体重を預ける設計ではありません。
| 種類 | 主に使う場所 | 体重を預ける | 介護保険 |
|---|---|---|---|
| U字で前に車輪が付いた歩行器 | 病院での練習 | ○ | (家では使わない) |
| 持ち上げて進む歩行器 | 家の中 | ○ | レンタルか購入を選べる |
| 四輪の歩行車(手・前腕で支える) | 外・施設 | ○ | レンタル |
| シルバーカー(手押し車) | 外(散歩・買い物) | ✕ | 対象外(自費) |
※2024年4月から、車輪のない歩行器などは、介護保険で「借りる」か「買う」かを選べるようになりました。どちらがよいかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。
退院のときによく聞かれること|「外に出るときは、どれを使えばいい?」
病棟で退院の話をしていると、「家の中ではシルバーカーは使わないですよね。外に出るときや通院、施設で過ごすときは、どれを使えばいいですか?」と聞かれることがよくあります。
答えの軸は、ここでも「体重を預ける必要があるか」です。
- 外で体重を預けたい・ふらつきがある → 手で支える四輪の歩行車(介護保険でレンタル)
- 自分の足で歩けて、荷物を運びたい・少し安心したい → シルバーカー
- 家の中 → 手すりや家具を伝って歩く。必要なら持ち上げて進む軽い歩行器
どれが合うかは、入院中なら担当のリハビリスタッフに、退院後ならケアマネジャーに「外ではどれを使えばいいですか」と聞いてみてください。
シルバーカー(手押し車)が合うのは、こんな方
逆に言うと、シルバーカーが活きるのは——
- 自分の足で歩けるけれど、あるとしっかりするという方
- 買い物の荷物を運ぶのがつらくなってきた方(カゴに入れて押して帰れます)
- 杖ほど頼らないけれど、手ぶらで歩くのは少し心細い方
現場でよく提案するのは、「屋外はシルバーカー、家の中は伝い歩き」という使い分けです。家の中は家具や壁を伝えるので、シルバーカーの出番は主に外。散歩と買い物の相棒、というのが一番はまる使い方です。
歩行補助具そのものを嫌がる方もいます。その場合、家の中は手すりや伝い歩きの環境を整えるのが先だと思っています(杖を嫌がる親への向き合い方)。ただ、外に出るときにシルバーカーを勧めるのは、大いにありです。買い物の荷物を運べる道具として、受け入れてもらいやすいこともあります。
買う前に、家のまわりをチェックしてください
もうひとつ、買う前に確認してほしいことがあります。自宅のまわりが、段差ばかりではないかということです。
シルバーカーは多少の持ち運びは想定されています。でも、家を出てすぐ階段、道路に出るにも段差、スーパーまでの道も段差だらけ——という環境だと、持ち上げてばかりで、本来支えてほしいはずの道具がただの荷物になってしまいます。
買う前に一度、親御さんがいつも歩くルートを思い浮かべてみてください(帰省のときに一緒に歩いてみるのが一番確実です)。あわせて、玄関まわりに置き場所があるかも見ておきましょう。

シルバーカー(手押し車)の選び方|PTが見る4つのポイント
- ① 足元の広さが歩幅に合っているか——フレームの足元が狭い機種だと、歩幅の大きい方は足が本体に当たります。足がよくぶつかるのは、現場でいちばんよく見る「合っていない」サインです。実際に押して歩けるなら、店頭で「いつもの歩幅」で試すのが確実です
- ② 持ち手の形(横持ちか、縦持ちか)——横一文字のハンドルは押しやすく、縦グリップは体を起こしやすい。握ったときにしっくりくる方を。持ち手の高さは多くの機種で調節でき、意外とどの方にも合わせやすい印象です
- ③ 重さ——軽いほど持ち運びは楽ですが、軽いタイプは少し体重がかかっただけで車輪が持ち上がりやすいです。足の力やバランスに不安がある方は、どっしりした重めの機種のほうが合うことがあります。段差の多い環境なら軽さ、平らな道が中心なら安定感を優先
- ④ 座面は「つくり」を見る——ここは正直に書きます。小さな簡易座面に座って休むのは、私はあまりおすすめしません。ブレーキを確実にかける必要があり、椅子としての安定感も十分ではないからです。座って休憩することが目的なら、しっかりした座面と確実なブレーキのある機種を選んでください(下で紹介します)
タイプ別おすすめ3機種|現場目線で
取り上げるのは、私が現場感覚で「これなら」と思える3タイプです。
① 軽さ重視|テイコブ シプール SICP02(約3.8kg)
とにかく軽く、持ち上げやすいコンパクト型。「大きいものはいらない、散歩と買い物が少し楽になれば」という方に向いています。折りたたみもできて、バスや電車にも連れて行きやすい一台です。ただ、軽いぶん車輪が持ち上がりやすいので、足の力やバランスに不安がある方には②のほうが合います。価格は16,000円前後(2026年7月時点の実売の目安)。※座面は簡易的なので、座って休むことが目的の方には向きません。
② 安定感の定番|テイコブ ST07(約5.7kg)
少し大きめで重さもあり、押していて安定しやすい定番型。収納カゴもしっかりしています。座面は前後どちら向きでも使えるつくりです。「軽さより、押していて安心な方がいい」という方、買い物の荷物が多めの方に。価格は17,000円〜2万円台前半と、店舗による幅が大きめです(2026年7月時点)。
③ 座って休みたい方に|RAKU 歩行補助車
座面が持ち手側にあるのが特徴で、座るときに本体の前へ回り込む必要がありません。回り込むときのつまずきが起きにくく、操作もシンプル。散歩の途中でこまめに休みたい方は、こういう構造のものを選んでください。パーキングブレーキ付きです。価格は1万円前後(2026年7月時点)。
安全に使うための3つの注意|実際によく見る危ない場面
- 体重を預けない——体重をかけると車輪が持ち上がり、転倒のもとです。実際によく見る場面です。体重を預けたくなってきたら、歩行器への切り替えを相談するサインです
- 階段では使わない・運ばない——実際には、階段でシルバーカーを持ち上げて移動している方をよく見かけます。両手がふさがって一番危ない場面です
- 下り坂は勢いに注意——坂道では勢いがつきすぎて、本体に引っぱられることがあります。急な坂のルートは避けるのが無難です
よくある質問(Q&A)
Q. 親がシルバーカーを嫌がります
A. 現場では男性に多い印象です。無理に外で使わせようとせず、「家では使わなくていいから、外だけでも」と範囲を区切ると受け入れられやすくなります。それでも大事なのは、必要性が本人に伝わること。「これがあると、しっかり歩けるよ」と体感してもらえた方は、自然に使い始める印象です。杖の場合と同じで、嫌がる気持ちへの向き合い方が参考になるはずです。
Q. 介護保険でシルバーカーは買えますか?
A. シルバーカーは介護保険の対象外で、自費での購入になります(だいたい1〜2万円台が中心です)。一方、歩行器・歩行車は介護保険のレンタル対象。「保険で借りられるか」が、道具の区分を見分ける目印にもなります。
Q. 病院で使っていた歩行器を、家用に買ったほうがいいですか?
A. 病棟で使うU字の大きな歩行器は、家では使わないことがほとんどです。家の中は手すりや伝い歩き、必要なら持ち上げて進む軽い歩行器。外は、体の状態に合わせて四輪の歩行車かシルバーカーです。どれを用意するかは、退院前に担当のリハビリスタッフやケアマネジャーと相談してください。歩行器は介護保険で借りられます。
Q. 家の中でもシルバーカーを使っていいですか?
A. 家の中では使わないことがほとんどです。家の中は狭く、段差もあるからです。手すりや家具を伝って歩ける環境を整えるのが先で、それでも不安なら持ち上げて進む歩行器を検討します。
Q. 手押し車・押し車と、シルバーカーは同じ物ですか?
A. ふだん「手押し車」「押し車」と呼ばれている物の多くは、シルバーカーのことです。ただ、お店によっては四輪の歩行車も「手押し車」として並んでいることがあります。見分けるポイントは、体重を預けられる設計かどうか。介護保険で借りられるのが歩行車、自費で買うのがシルバーカーと考えると分かりやすいです。
Q. シルバーカーに補助金はありますか?
A. シルバーカーは介護保険の対象外ですが、市区町村が独自に購入費を助成しているところがあります。対象や金額は地域ごとにまったく違い、「65歳以上」「介護保険の認定を受けていない方に限る」「所得の条件がある」「指定の機種に限る」「買う前の申請が必要」といった条件がつくことがあります。買う前に、お住まいの市区町村の高齢者福祉の窓口か、地域包括支援センターに「シルバーカーの助成はありますか」と聞いてみてください。
Q. シルバーカーと歩行器、どちらか迷います
A. 迷う時点で、一度専門職に見てもらうのがおすすめです。担当のケアマネジャーさんや地域包括支援センター、リハビリ中の方なら担当の理学療法士に「シルバーカーで大丈夫ですか?」と聞いてみてください。歩き方や体の状態に合わせて、適切な歩行補助具を選定してもらいましょう。
杖の正しい使い方(持つ手・歩き方・階段)は、こちらにまとめています。
📎 杖の正しい使い方|持つ手・歩き方・階段の順番を現役PTがわかりやすく解説
まとめ|「歩ける人の相棒」として選ぶ
- 分かれ目は「体重を預ける必要があるか」——預けるなら歩行器(保険レンタルで試せる)
- シルバーカーが合うのは「歩けるけれど、あるとしっかりする」「買い物を楽にしたい」方
- 病院のU字の歩行器は家では使わない。家の中は手すり・伝い歩き、必要なら持ち上げて進む軽い歩行器
- 買う前に、家のまわりの段差と置き場所をチェック。持ち上げてばかりなら荷物になる
- 選び方は、足元の広さ・持ち手・重さ・座面のつくり。軽い機種は車輪が浮きやすいので、足の力やバランスに合わせてどっしりした物も候補に。小さな簡易座面での休憩はおすすめしない
- 迷ったら専門職へ。歩き方や体の状態に合った歩行補助具を選定してもらうのが確実
杖のことは杖を嫌がる親への向き合い方とT字杖おすすめランキングに、転んだり、ふらつきが増えてきた気がする方は、高齢者が転倒を繰り返す3つの原因|家族にできる対策もあわせてどうぞ。
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