※本記事にはアフィリエイト広告が含まれています。
📅 2026年8月公開
トイレの悩みは、口にしにくいものです。現場で見ていても、男性は「最近トイレが多くてね」と話してくれますが、女性はあまり言葉にされない印象があります。だからこそ、検索して「骨盤底筋」という言葉にたどり着いたあなたに、理学療法士として順番にお伝えします——どこにある、何の筋肉なのか。そして、どう鍛えるのか。
骨盤底筋はどこにある?
骨盤底筋(こつばんていきん)は、その名のとおり骨盤の底にあります。骨盤をボウル(鉢)だとすると、その底にハンモックのように張られた筋肉のグループです。椅子に座ったとき、座面に触れているあたり——恥骨(前)と尾骨(後ろ)の間に張られています。
力の入れ方の感覚は、現場ではこう伝えています。「お腹の中心を、しめる感じ」。おしっこを途中で止めるときの感覚、おならを我慢するときの感覚——と言われることもあります。最初は分かりにくくて普通です。後半の体操で、少しずつ感覚をつかんでいきましょう。

骨盤底筋の一覧|ひとつの筋肉ではなく「チーム」です
骨盤底筋は、実はひとつの筋肉の名前ではなく、複数の筋肉の総称です。主なメンバーを一覧にします。

| 層 | 筋肉の名前 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 深層 骨盤隔膜 | 肛門挙筋(こうもんきょきん) 恥骨尾骨筋・恥骨直腸筋・腸骨尾骨筋に細分。女性では一部が恥骨膣筋、男性では前立腺挙筋として区別されることも | 骨盤底の主役。膀胱・子宮・直腸などの内臓をハンモックのように支える |
| 尾骨筋(坐骨尾骨筋) | 底の後ろ側を支える | |
| 中間層 深会陰隙(旧・尿生殖隔膜) | 深会陰横筋 | 底の前側を支える |
| 外尿道括約筋 女性ではさらに尿道膣括約筋・尿道圧迫筋とあわせて「尿道括約筋複合体」 | 尿の出口を締める | |
| 表層 浅会陰隙 | 球海綿体筋 | 女性では前庭球を、男性では尿道球を囲む |
| 坐骨海綿体筋 | 底の外側を支える | |
| 浅会陰横筋 | 底の前側を支える | |
| 外肛門括約筋 | 便の出口を締める |
細かい、と感じたと思います。名前を覚える必要はまったくありません。大事なのは、深層・中間層・表層の3層が「チームで骨盤の底を支えている」ということ。だから体操も「どれか1つの筋肉」を狙うのではなく、チーム全体をまとめて働かせる形になります。
役割は大きく3つです。
- 支える——膀胱・子宮・直腸などの内臓を下から支える
- 締める——尿や便の出口をコントロールする
- 体幹の土台になる——横隔膜・お腹まわりの深い筋肉とチームを組んで、お腹の圧力と姿勢を安定させる。リハビリの現場で腹式呼吸の練習とセットで扱うのは、この連動があるからです
体操の前に|「水分を控える」は逆効果です
体操の前に、現場でよく出会う悪循環の話をさせてください。トイレが近いこと・もれることが気になって、水分を控えてしまう方が本当に多いのです。「トイレが増えるのが嫌」「(入院中なら)ナースコールで人を待つのが嫌だから、行かなくて済むようにしたい」——気持ちは、痛いほど分かります。
でも、水分を控えると脱水気味になり、ふらつきやすく、転倒のリスクが上がります。夏なら熱中症の危険も。トイレの悩みを我慢で解決しようとすると、もっと大きなリスクと引き換えになってしまう——だからこそ、水分はきちんと取りながら、筋肉の側を鍛えて解決に向かうのがこの体操の目的です。

骨盤底筋を鍛える体操|4つでOK
① 基本の「しめる」体操(座って・寝て)
椅子に座ったままでも、仰向けに寝てでもできます。
- 背すじを軽く伸ばして、肩の力を抜く
- 「お腹の中心をしめる」感覚で、骨盤の底をきゅっと締める(おしっこを途中で止めるイメージ)
- 5秒キープして、ゆっくりゆるめる
- これを10回
ポイントは、朝・昼・晩に分けて1日3回にすること。一気に3セットやろうとすると結構長くて、続かないんです。歯磨きのように「朝の分、昼の分、夜の分」と分けるのが、現場で見ていて続くやり方です。息は止めず、お腹やお尻に力を入れすぎないこと。

② 腹式呼吸とセットで(寝て・座って)
骨盤底筋は呼吸と連動しています。リハビリの現場でも、体幹の練習を兼ねて腹式呼吸とセットで行います。
- 鼻からゆっくり息を吸って、お腹をふくらませる
- 口から細く長く吐きながら、お腹の中心をしめる
- 5〜10回
③ ブリッジ(お尻上げ・寝て)
お尻まわりと体幹も一緒に鍛えられる、現場の定番運動です。
- 仰向けに寝て、両膝を立てる
- お尻をきゅっとしめ、お腹の中心もしめながら、お尻をゆっくり持ち上げる
- 肩から膝が一直線になったら、ゆっくり下ろす
- 10回を目安に
④ 立って、お尻をしめる(立って)
台所仕事の合間など、立ったままできる版です。必ず机やテーブルに手を置いて、支えのある状態で行ってください。
- 机やテーブルに両手を置いて立つ
- つま先をやや内また気味にする
- お尻をきゅっとしめる(お腹の中心も一緒に)
- 5秒キープ×10回——回数はしめる体操と同じです
床で行うときは、腰や背中が痛くならないよう、厚手のマットを1枚敷くのがおすすめです。私の患者さんにも、床の運動用に用意してもらうことがあります。価格は3,000円前後です(2026年8月時点・色により多少変わります)。
※どの体操も、痛みが出たら中止してください。腰やお腹に痛みがある方は、無理をせず主治医やリハビリ担当に相談を。
続けるコツ|効果は3週間〜数か月先
骨盤底筋は、鍛え始めてすぐには変わりません。目安は3週間〜数か月。だからこそ「頑張る」より「仕組みにする」が正解です。朝昼晩の食後とセットにする、カレンダーに丸をつける——続けた分だけ、確実に応えてくれる筋肉です。
夜のトイレと転倒の話
トイレの悩みは、転倒とつながっています。現場でよく聞くのは「急いでいて危なかった」、入院中なら「(申し訳なくて)付き添いの看護師さんを呼ばなかった」という話です。夜中のトイレは、暗さと寝起きのふらつきが重なる、家の中でいちばん転びやすい場面のひとつ。夜間の転倒対策もあわせて整えておくと安心です。
よくある質問(Q&A)
Q. 男性にも効果はありますか?
A. あります。骨盤底筋は男女どちらにもあり、男性の頻尿・尿もれ対策としても骨盤底筋トレーニングは広く行われています。やり方は同じで大丈夫です。
Q. どのくらいで効果が出ますか?
A. 個人差はありますが、3週間〜数か月が目安です。すぐに変わらなくても、やめずに続けることがいちばんの近道です。
Q. 病院に行った方がいい場合は?
A. 悩みを感じた時点で、受診してよいと思います。泌尿器科(女性は婦人科でも)が窓口です。特に、尿に血が混じる・痛みがある・急に症状が変わったという場合は、体操より先に受診を。トイレの悩みで受診するのは恥ずかしいことではなく、医療者にとっては毎日あつかう、ごく普通の相談です。
Q. リハビリ中にトイレばかりで、申し訳なくて…
A. 申し訳なく思わなくて大丈夫です。我慢や遠慮のほうが、体には良くありません。そのうえで、ひとつ現実的なコツを——リハビリの前にトイレを済ませておくのは、立派な自己管理です。担当としても、そのほうが安心してリハビリに集中してもらえます。なお、入院中はトイレまでの移動が歩く練習を兼ねることもありますが、それが良い運動になるかは体の状態によるので、担当が状態に合わせて考えてくれます。
まとめ|骨盤の底のチームを、1日3回で育てる
- 骨盤底筋は骨盤の底にある筋肉のチーム。支える・締める・体幹の土台の3役
- 「トイレが近いから水分を控える」は逆効果。水分は取って、筋肉を鍛える
- 体操は4つ——しめる体操(5秒×10回を朝昼晩)・腹式呼吸・ブリッジ・立ってお尻をしめる
- 効果は3週間〜数か月。分けて、仕組みにして、続ける
- 悩みを感じたら受診してよい。血尿・痛み・急な変化は、体操より先に泌尿器科へ
体を動かす習慣づくりには座ってできる転倒予防体操も、夜のトイレまわりの安全は夜間転倒の対策もあわせてどうぞ。
📩 最後まで読んでいただきありがとうございます
「うちの場合、この体操で合っている?」——体の状態によって、合う運動は変わります。理学療法士として、状況に合わせてお答えします。
✉️ お問い合わせフォーム
📚 介護・転倒予防のまとめページ(他の記事から探す)



コメント