高齢者の体操|座ってもできる転倒予防メニューを現役PTが解説

水色のジャージを着た高齢の白黒猫と、リスの理学療法士キャラが、明るいリビングで手すりにつかまりながら転倒予防体操(片足立ち)をしているイラスト 介護
ケレン(現役理学療法士)
この記事を書いた人:ケレン(現役理学療法士)
病院で毎日、高齢の患者さんとご家族の「退院後の生活」に向き合っています。
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📅 2026年7月更新:座ってできるバージョンと「今日は休む」のサインを追加しました。

「最近、親の歩き方がふらついてきた」「転ぶ前に、何か運動をさせたいけれど、何をどれくらいやればいいの?」——そんなふうに感じていませんか。ご自身が「このごろ立ち座りで足に力が入りにくい」と気づいて読んでくださっている方もいるかもしれません。

私は理学療法士として、主に入院中の患者さんのリハビリを担当しています。骨折や入院をきっかけに足腰が弱った方が、退院後に「もう転びたくない」と再発予防に取り組む——そんな場面に日々向き合っています。その経験からお伝えしたいのは、転倒予防でいちばん大切なのは「すごい運動」ではなく、「無理なく・安全に・続けられること」だということです。

この記事では、自宅で(座ったままでも)できる転倒予防の体操と、続けるコツを、できるだけかみ砕いてお伝えします。あくまで一般的な目安なので、持病やケガのある方は、主治医や担当の理学療法士に相談しながら行ってくださいね。

なぜ高齢になると転びやすくなるのか

「年だから仕方ない」と思われがちですが、転びやすさには、体の変化がいくつか重なっています。

① 足腰(下肢)の筋力が落ちる

立つ・歩く・踏ん張る、そのすべてに足腰の力が必要です。とくに、つまずいたときに「とっさに足を出して支える」力が落ちると、そのまま転んでしまいます。

② バランスを保つ力が落ちる

体が傾いたときに立て直す力(バランス機能)も、加齢で少しずつ低下します。片足になる一瞬や、振り向いた拍子に、ふらつきやすくなります。

③ 注意力・認知機能の影響

意外と見落とされがちですが、「ながら動作」でのうっかりも、大きな原因です。考えごとをしながら歩く、急いで振り返る——そんなときに足元への注意がそれて、転倒につながります。頭と体は、思っている以上につながっています。

転びやすくなる3つの理由(足腰の筋力・バランス力・注意力)を示した図解

転倒予防体操の「考え方」——ここが大事

具体的な体操の前に、安全に効果を出すための前提を3つお伝えします。

  • まずは「座って」でOK:立つのが不安な方は、座ったままでも十分に始められます。安定したイスに深く腰かけて行いましょう。
  • 立ってやるときは、必ず手すりや安定した台につかまって:「鍛えるために何も持たない」は、転倒予防ではむしろ逆効果になりがちです。
  • 下半身を中心に、全身をまんべんなく:どれか一つだけでなく、足腰・バランス・肩まわりを少しずつ動かしましょう。

⚠️ 「○秒・○回」にこだわりすぎないでください

現場でよく見るのが、「片足立ちを10秒」と決めると、姿勢が崩れて転びそうになっても、意地でも10秒やり遂げようとしてしまう方です。これはとても危険です。秒数や回数は、あくまで“目安”。ぐらついたら、すぐにやめる・つかまる。記録を伸ばすことより、安全に続けることを優先してください。

立ってやる? 座ってやる?|最初の分かれ道

結論はシンプルです。少しでもふらつく・転ぶのが心配・なんとなく不安——そう感じる方は、座ってやってOKです。

理由があります。不安なまま立って体操をすると、体に余計な力(筋緊張)が入ります。すると、鍛えたい筋肉にはかえって効きにくくなり、何より運動が楽しくなくなってしまうのです。

一方で、いま家で生活できている方なら、まずは立ってやってみるところから。「立ってできる種目は立って、不安な種目は座って」というメリハリが、いちばん長続きします。

自宅でできる転倒予防体操6つ

座ったまま・手すりを持って立って、のどちらでもできるものを選びました。痛みのない範囲で、できるものから始めてください。

① 足踏み

座ったまま、または手すりを持って立ち、その場で足を交互に上げます。太ももを軽く持ち上げる意識で。歩く力の土台になります。

② 背伸び(かかと上げ)

かかとをゆっくり上げてつま先立ち、そしてゆっくり下ろします。ふくらはぎを使い、立つ・歩くときの安定につながります。座って、つま先とかかとを交互に上げるだけでもOKです。

座ってできる足踏みとかかと上げのイラスト。太ももとふくらはぎを鍛える体操

③ スクワット(立ち座り)

イスからの立ち座りを、ゆっくり繰り返すだけでも立派なスクワットです。太もも・お尻の大きな筋肉を鍛えられます。不安なときはテーブルや手すりに手を添えて。

イスからの立ち座りがそのままスクワットになることを示す3コマのイラスト。不安なときはテーブルや手すりに手を添えて行う

④ 片足立ち

必ず手すりやテーブルに手を添えて、片足を少しだけ浮かせます。バランスの練習になります。

※ 秒数や回数にこだわらず、ぐらついたら、すぐに足をつきましょう。

⑤ バンザイ(腕の上げ下げ)

両手をゆっくり上に伸ばして、下ろします。姿勢を伸ばし、肩や背中のこわばりをほぐします。猫背の予防にもつながります。

⑥ 肩回し

両肩をゆっくり大きく回します。上半身の動きを保ち、姿勢や呼吸を楽にします。

座ったままできるバンザイと肩回しのイラスト。上半身をほぐして姿勢と呼吸を楽にする

座ってできるバージョン|イスに座ったままでOK

じつは上の6つのうち、④片足立ち以外は座ったままでもできます。

種目 座ってやるコツ
① 足踏み 座ったまま、ももを交互に持ち上げる
② かかと上げ 座ったまま、かかとを上げ下げ
③ スクワット 「イスからの立ち座り」そのものが最高のスクワット
⑤ バンザイ・⑥ 肩回し そのまま座ってOK
④ 片足立ち 座ってやる日は、代わりに下の2つを

⑦ 座って太ももの裏を伸ばす(ハムストリングスのストレッチ)

  • イスに浅く座り、片方の脚をまっすぐ前に伸ばして、かかとを床につける
  • 背中を丸めずに、体をゆっくり前に傾ける
  • 太ももの裏が「気持ちよく伸びる」ところで20~30秒。左右行う

太ももの裏が硬くなると、歩幅が狭くなったり、立ち上がりがつらくなったりします。「痛気持ちいい」の手前で止めるのがコツです。

⑧ 首の体操

  • ゆっくり右を向く→正面に戻る→左を向く(各2回)
  • 右に首を傾げる→正面→左に傾げる(各2回)
  • 首をゆっくり大きく回す(右回り2回・左回り2回)
  • 呼吸は止めない。痛みやしびれが出たらすぐ中止

首まわりがほぐれると、歩くときにまわりを見やすくなります。

座ってできる柔軟体操のイラスト。太ももの裏(ハムストリングス)のストレッチと首の体操

続けるためのコツ(じつは、いちばんの難関)

正直にお伝えすると、転倒予防でいちばん難しいのは「続けること」です。現場でも、効果的だと分かっていても続かない方がたくさんいます。だからこそ、こんな工夫をおすすめします。

  • 一日ほんの少しでいい:張り切って毎日たくさん、は続きません。若い人と同じで、やりすぎはかえってケガのもと。「ちょっとだけ」を毎日のほうが、ずっと効果的です。
  • “作業”にしない・遊びの要素を:「足踏み10回」と義務にすると飽きてしまいます。テレビを見ながら、音楽に合わせて、など楽しめる形にしてみてください。
  • 一緒にやる人がいると続く:ご家族が隣で一緒に、声をかけながら。これが、どんな道具よりも続ける力になります。

「がんばらせる」より「一緒に楽しむ」。それが、転倒予防がいちばん長続きするコツです。

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もうひとつ。現場で「体操が続く方」に共通していると感じるのは、目標があることです。「趣味を続けたい」「孫と遊びたい」——そういう方は、話し方からして活気が違います。

だから、カレンダーの「今月のごほうび」欄には、ぜひ目標を書いてから始めてみてください。体操は、目標までの道のりです。

できた日はカレンダーに大きな丸をつけて楽しく続けるコツの図解

あると安全・続けやすい道具

体操そのものは道具なしでできますが、あると安全に・楽しく続けやすくなるものを、正直にご紹介します。

① 安定したイス(ひじ掛け付き)

座って体操するにも、立ち座りの練習にも、ぐらつかないイスが基本です。ひじ掛けがあると、立ち上がりも安心です。

② 滑り止めマット

足元が滑ると、それだけで危険です。体操するスペースに敷いておくと、安心して動けます。

③ セラバンド(ゴムバンド)

軽い負荷で、座ったままでも足腰を鍛えられます。強く引っぱりすぎず、ゆっくり使うのがコツです。お手頃な値段で始められます。

④ (余裕があれば)自転車エルゴメーター

座ってこぐ運動で、足腰にとても良い運動です。正直、長続きが難しい方も多いのですが、習慣にできる方には本当におすすめできます。しっかり漕ぐ自転車タイプと、電動で足を動かしてくれる小さいタイプがあります。

歩く・こぐといった有酸素運動の効果や続け方は、こちらの記事でくわしく解説しています。

体力、落ちてきていませんか?自宅でできる有酸素運動という選択肢
体力低下の原因を分かりやすく解説。mMRC息切れスケールで今の状態をチェックし、有酸素運動の心拍数目安や自転車エルゴメーター・電動サイクルマシンの活用法まで紹介します。

もうひとつ、道具というより「足元」の話です。体操をするときは、かかとのある靴(かかとを踏まないこと)だと安心です。スリッパやかかとを踏んだ靴は、それ自体が転倒のもとになります。履きやすくて安全な靴は、こちらで詳しく紹介しています。

「今日は休む」のサイン

  • 熱があるとき
  • どこかが痛むとき

この2つの日は、思い切って休んでください。休むのも体調管理のうちです。それ以外の日は、「無理をしない範囲で」で大丈夫です。

熱や痛みがある日は思い切って休んでよいことを示す図解。休むことも大切な体調管理のひとつ
🩺 血圧のこと
血圧は、測れるときに測って、記録をつけることをおすすめします。血圧や体重を「気にする習慣」そのものが、体調管理の第一歩だからです。
そのうえで、今のところ大きな心配がない方は、運動のたびに毎回測らなくても大丈夫です(毎回はやっぱり手間なので)。ただし、心臓の病気をしたことがある方は、運動前の血圧測定を強くおすすめします
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測れた日だけ書けばOKの万年式です。血圧や体重を「気にする習慣」そのものが体調管理の第一歩——冷蔵庫や血圧計のそばにどうぞ。
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こんなときは無理せず専門家に

次のようなときは、自己流で進めず、主治医や理学療法士に相談してください。

  • 持病やケガ(骨折後・関節の手術後など)がある
  • 体操中に痛み・めまい・強い息切れが出る
  • 最近、転ぶ回数が増えている/一度でも転んで体を打った

とくに「転びを繰り返している」ときは、体操だけでなく、原因の見直しも大切です。こちらもあわせてどうぞ。

高齢者が転倒を繰り返す3つの原因|家族にできる対策をPTが解説
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まとめ

転倒予防体操は、「すごい運動」よりも「無理なく・安全に・続けられること」がいちばんです。座ってでもOK、立つときは手すりを持って、秒数や回数にこだわりすぎない。そして、ご家族と一緒に、楽しみながら少しずつ。大切なご家族(そしてご自身)が、いつまでも自分の足で歩けますように。気になることがあれば、お気軽にご相談くださいね。

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